駅長「たま」、うめ星電車…和歌山電鐵の10年

赤字脱却へ運賃値上げ、新補助スキーム実施

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さまざまな座席が並び、これまで以上に木の香あふれるうめ星電車の車内

梅が特産の和歌山県の中でも、とくにみなべ町、田辺市で産する南高梅は高級ブランドであり、昨年にはその生産システムが世界農業遺産ともなった。日本のソウルフードで健康にもよいことを海外に発信する地域貢献への思いも込め、南高梅の梅干しから連想して“うめ星”となり、水戸岡氏もその発想に基づくデザインを手掛けた。

外観の色は、赤しそ漬けの赤と決めた。実際の梅干しの中から見本を選び、華やかさの中に落ち着きがある赤紫色とし、さらに星の輝きをメタリックで織り込んだ。一方の車内は、梅干しの“和”のテイストにちなみ、従来の通勤電車にはなかった和紙の日除け、木貼り(突板)の天井などをこしらえ、木枠の窓には神社風の幕を吊り、「ななつ星」以来、採用を続けている大川(福岡県)の伝統工芸である組子細工も入れた。天井まで木貼りとしたのは、和歌山電鐵の改装車両の中でも初である。団体営業時には畳を敷くアイデアも織り込まれている。

10年を経過して新スキームに転換

和歌山電鐵の10年はユニークな電車とたま駅長による楽しい話題があふれる一方で、瀕死状態にあった地方鉄道の再生に臨んだ10年でもあった。

引き継ぎ前の南海貴志川線は、年間約5億円の赤字路線であった。新会社設立前の試算で、上下分離と運営の効率化を図ってなお年平均8200万円の損失が見込まれると判断されたことから、向こう10年と区切って8億2000万円を上限に運営補助を行うスキームでスタートした。そして、その期限が今年4月に迫った1月に、県および2市と新協定が結ばれた。

今後の新たなスキームは、運営補助を0とする一方、線路設備の更新等に伴う“下”部分への設備投資の一部を沿線自治体が支援する。具体的には、従来は国の補助制度が対象としていたレール・枕木・踏切保安装置等の更新および修繕について、今後は自治体も協調補助を行う。今後10年間に予定する全事業費は約18.7億円で、うち1/3は国の補助だが、残る2/3(上限約12.5億円)を自治体負担とする。内訳は和歌山県が約4.5億円、和歌山市約5.2億円、紀の川市約2.8億円。国の補助対象以外の駅の待合施設や電車改装等は和歌山電鐵の自社負担である。

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