駅長「たま」、うめ星電車…和歌山電鐵の10年 赤字脱却へ運賃値上げ、新補助スキーム実施

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うめ星電車の天井は突板の手法で木が貼られ圧巻

また、利用者にも負担を求め、この4月1日に平均14%の運賃値上げ(和歌山~貴志間360円→400円)を行った。すなわち今、和歌山電鐵はきわめて大きなターニングポイントを通過したところである。

和歌山電鐵は今、次の10年へのスタートをきった。運営補助が0となったので、これからは運賃値上げとともに、さらなる増収への取り組みに迫られる。少子高齢化による人口減少に拍車がかかるうえ、団塊の世代のリタイアが続くこの4~5年は最も厳しい時期と予測する。道路事情があまり芳しくなかった沿線でも道路整備が進む。それを乗り切るには、沿線に人を集めるしかない。経営の方針は、鉄道の再生から、次のステップとして地域の再生へと切り替える。

究極の姿はLRT化

『鉄道ジャーナル』9月号(7月21日発売)。特集は「地方路線 旅と現実」。画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

かつての沿線は開発の遅れた地域だったが、近年はミニ開発が進んできたので、今後は封印していた沿線開発にも乗り出す。ただし地域再生が目的なので、地域の事業者と手を携える方針は崩さない。その一例として、沿線の古い団地のリニューアルなどを通じて、世代交代しながら住むことが可能な地域にする。リタイアにより人が動かなくなったら、その時点で地域も公共交通も先がなくなるので、人が動く仕組み作りに挑む。

運営補助がなくなり、その面では厳しさに迫られるが、幸い経営基盤は固まってきた。すなわち、当初の予定どおり2012年に600Vから1500Vへの昇圧を行い、変電所を伊太祈曽駅1か所に集約したほか、想定された損失補助の余剰分(基金)を使って、これまでの10年で軌道強化や老朽分岐器の交換、車両の老朽機器対策等は大幅に進捗した。これらにより、今後の想定外の出費の可能性は低くなっており、安定経営に向けた体力は備わってきたと言う。

小嶋氏が描く究極の姿は、LRT化だ。和歌山電鐵の路線の半分は都市の市内・近郊線である。LRTならば市街地の姿に合わせて短い間隔で駅を設けるにもコストは引き下げられ、管理コストも抑えられる。利便性も高い。都市部というまとまりの中では、環境問題や高齢化社会での生活の問題からも理想的な公共交通機関であると考えている。 

(撮影:鶴通孝)

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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