クーデター失敗でも、日本株は下落の可能性 地政学リスクが再燃、一時的な円高が進行も

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想定される流れは、地政学リスクを嫌気したリスク回避の円買いがメインとなりそうだが、もし全体相場がさほど影響を受けなくても、個別銘柄に影響が波及する可能性はありそうだ。

例えば、現在、黒海沿岸の北部の都市シノップでは、三菱重工を含む企業連合による原発建設計画が進められている。昨年、安倍首相はトルコを訪問し、「トルコ共和国建国100周年」の2023年に向けて、橋梁、発電施設、病院、高速鉄道など多くのインフラ構築に日本企業が協力するという旨のスピーチを実施した。

これは成長戦略の一つであるインフラ輸出に関するトップセールスだ。政府は2020年までにインフラ輸出額を30兆円と10年比で3倍まで増やす方針を掲げている。

また、1890年のエルトゥールル号遭難事件(和歌山県串本町で遭難したトルコ(当時はオスマン帝国)の軍艦の遭難者を助けた)やなど歴史的な観点からトルコと日本が非常に親しいことなどを背景に、伊藤忠商事など大手商社、大成建設など大手ゼネコン、トヨタと非常に多くの企業がトルコで事業展開をしている。

任天堂株に波及するかどうかが、ポイント

もちろん、今回のクーデターの状況を見極める必要はあるが、こうした銘柄は連休明けの19日に売られる可能性がある。戦闘などによる実質的な損失などの影響が出ていなくても、機関投資家などがいったんリスク回避でポジションを外すからだ。

日経平均は5連騰で1万6500円レベルまで回復したが、地政学リスクを嫌気した円買いなどによって上げ一服となる公算は小さくない。上記のように、トルコで事業展開している銘柄が売られたとしても、これはやむを得ない部分がある。

だが、足元大商いとなっている任天堂辺りまで売りが波及すると、日本株には厳しい流れとなる。ポケモンGOが日本でサービスを開始するのは7月末とも言われる。たまたまだが、これは日銀金融政策決定会合(28日~29日)と同じタイミングだ。19日まで若干の時間があるが、こうした月末のイベントを意識した買いの流れが止まるかどうか、要注目となりそうだ。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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