ジョージ・ソロス「英国の離脱はEUを救う」

改革の好機ととらえれば崩壊はない

EUがやってはいけないのは、離脱派が考えたEUの欠陥から目を背けることだ。EUの指導者たちはこの欠陥に真摯に目を向けるべきである。そして英国の離脱を改革の好機ととらえ、ほかの離脱の可能性がある国もあらためて参加したくなるような連合を目指すべきだ。

EU加盟で生活にどんな恩恵があるのかについて、フランスやドイツといった加盟国の有権者が知れば、EUの存在意義も再認識されるだろう。そうでなければ、EUの崩壊は現実味を帯びてしまう。

おそらくEUで英国の次に問題となるのは、金融危機に直面しているイタリアである。同国では10月に憲法改正の是非を問う国民投票が行われる。レンツィ首相が金融危機を解決できなければ、国民投票での敗北も予想される。そうなればEU懐疑派の反体制派政党「五つ星運動」の勢力が増す可能性もある。

打開策を見いだすには、レンツィ首相の指導力に加え、欧州の各機関の支援が欠かせない。しかし今のところそうした機関の動きは緩慢だ。

崩壊の危機を認識せよ

今こそ欧州の指導者たちは、EUが崩壊の危機に陥っていることを認識すべきだ。そして力を結集し、今後の方策を検討すべきである。そこにはいくつか重要な点がある。

一つ目はEU加盟国とそうではない国との間に明確な境界線を引くことだ。そしてEUの非加盟国に対して差別をしてはならない。

二つ目は、EUがもっと金融面での信用力を使うことだ。EUの存在意義が問われているときに、指導者たちがEUの借り入れ能力を活用しなければ、無責任に活動しているとのそしりを免れないだろう。

三つ目は、外敵からEUを守るために、防衛力を強化することだ。さらに難民危機対策も抜本的に見直す必要があろう。

EUが改革を進めれば、多くの国や人が所属を望む組織になるはずだ。そこへ向け指導者たちが行動を起こさなければ、EU崩壊という危機が再度忍び寄るだろう。

週刊東洋経済7月23日号

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