損保最大手MS&ADが新たな再編計画 傘下の三井住友など残し二兎追う

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こうした事業再編および一部地域での営業拠点集約、新たに稼働するコンピュータシステムの共同利用などでコスト削減を進める。三井住友海上の柄澤康喜社長によれば、コスト削減を含むシナジー効果は、「11年度比で15年度に年間400億~500億円程度になる」という。

合併によるデメリットを回避

組織再編では事業会社の合併という手法もあるが、MS&ADは採用しなかった。その理由について、あいおいニッセイ同和損保の鈴木久仁社長は、「合併では一時的なコスト増や時間的な負担などデメリットがあることを考慮した」と発言。「この10年で2度にわたる合併を実施したが、会社自体が内向きになってしまった」(鈴木社長)との反省に立ったうえで、今回の再編方式については「成長の加速が狙いだ」(同)としている。

合併では人事のポストの数が減るうえ、「火災保険などでは企業によるシェア調整による契約の減少も起こりうる」(業界関係者)と言われる。

ただ、収入保険料ベースで見た場合、MS&ADの事業再編の踏み込み度合いは大きいとは言いがたい。再編の対象となる事業の元受収入保険料は500億円程度。ベースは若干異なるが、年間3兆円近くに達する元受正味保険料の2%程度に過ぎない。というのも、保険料の半分近くを占める自動車保険(自動車損害賠償責任保険を含む)や火災保険については今後も2社による併売体制を継続していくためだ。

人員計画についても、今後の検討課題だ。現在の中期経営計画では、13年度までに09年度比で3000人前後の人員減少を見込んでいる。だが、その後については「再編協議の中で精査していく」(三井住友海上の柄澤社長)としており、事実上「未定」となっている。収入を増やすための「成長戦略」も今後の課題だ。

とはいうものの、3メガ損保グループの再編方針は出そろった。すでに事業再編を終えた東京海上HD、損保子会社2社の合併に踏み切るNKSJホールディングス、そして今回のMS&ADによる機能別の再編だ。国内の損保市場の成長性が乏しいことから、海外事業や生保を持つ総合的な保険グループとして生き残りをめざしている点では、3グループとも方向性は共通している。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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