民進党などが頑なに金融緩和政策を批判する理由はいくつかあると思われるが、まず彼らに同情すべき部分もある。アベノミクスが成功しているのは、民主党時代の金融政策の反動が顕在化した側面があるためである。実際、当時野党だった自民党の中で、日本銀行に対してインフレ目標の設定の必要性を指摘するなど、金融政策を問題にしたのは少数の政治家だけだった。
政権交代を実現させたばかりの当時の民主党政権が、「専門家」であるはずの日本銀行による金融政策に疑いを持つことは難しかっただろう。当時の日本銀行は明確なインフレ目標を持たなかったので、自らゼロインフレ率を目標に政策運営を続けていた。
リスクシナリオは「アベノミクスの頓挫」
ただ民主党政権時代にデフレが深刻化し円高と株安が長期化し国民生活を苦しめ続けた責任は重大で、それを解決する経済政策が何であるかを理解することは、政治家の重要な役割である。実際に民主党の中にも、それを正しく認識している政治家も少数ながらいた。
しかし、民主党政権は、デフレが続いているにも関わらず、「財政危機」という幻想に踊らされた。そして、子育て支援策や年金制度改革を十分実現できなかっただけではなく、国民との公約を破棄して大型消費増税を決定し、さらにデフレ圧力を強める方向の政策を決定した。その結果、選挙の洗礼を受けて、民主党は政権を失いそしてアベノミクスが起動したのである。
アベノミクス(後述するようにほとんどは金融緩和強化に限られる)の効果で長期安定政権が実現しつつある。一方で、民主党政権時に、多くの経済学者やエコノミスト、そしてメディアの解説者は日本銀行の金融政策は十分であり、また消費増税断行に諸手を挙げて賛成していた。今でも、できるだけ早い消費増税に賛成するエコノミストは多数派である。
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