「1秒差で勝てない」選手はなぜ開花したのか 日本選手権“4年連続2位"から今年は2冠

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「前年は1回も前に出ることなく負けたので、今回は自分が前に出ることで違う勝負ができるかなと思っていました。でも、前年に僕ができなかったパターンを佐藤さんにやり返されてしまいました」と大迫は先輩の強さを認めるしかなかった。

2年前の日本選手権1万mで、大迫はさらに攻め方を変えてきた。ラスト1周ではなく、残り2周でアタックした。しかし、佐藤が徐々に詰め寄ると、残り500mで追いつく。そして、ラスト200mで佐藤が大迫を引き離して、28分32秒07で堂々の4連覇を達成した。大迫は1.50秒差の2位に終わった。

過去2回はラスト1周の勝負に敗れてきた大迫だけに、3回目はロングスパートで勝負に出た。「毎年ラスト100mで負けていることをコーチに話したら、『ラスト800mから仕掛けて、2分を切ってこられれば、勝てるだろう』と言われていたんです。でも、持たなかったですね」と大迫。このときも佐藤の壁は厚かった。

1年前の日本選手権5000mは、村山紘太(旭化成)との一騎打ちが待っていた。大迫vs村山、どちらのキック力が上なのか。ファンがドキドキしながら見守るなか、最後の直線で村山が大迫の横に並ぶ。そして、逆転。大迫は0.50秒差で敗れた。

「レースとしては予定どおりです。あのまま行けると思ったんですけど、ラストは動きが硬くなってしまいましたね。どうすれば勝てるのか。周囲はいろいろ言いますけど、それを決めるのは僕自身ですし、変化していくのも僕自身。今はまだ差がないかもしれないですけど、2~3年後は自分が先に行っているという気持ちで練習をしています」

4年連続2位に終わった後、大迫はこう話していた。このときは調子が落ちていたという大迫だが、日本選手権後に5000mで13分08秒40の日本記録を樹立した。北京世界選手権5000mでは、0.41秒差で決勝進出を逃すも、ラスト2000mを5分06秒でカバー。これまでの日本人にはできなかった走りを披露している。

そして、今年の日本選手権。ついに大迫の“秘めたるパワー”が爆発した。

1万mはラスト勝負で9秒以上の大差をつけた

男子1万mには五輪参加標準記録突破者9名が参戦。リオをめぐる戦いは、熱気に満ちていた。残り6周で設楽悠太(Honda)がペースアップすると、村山紘太(旭化成)と大迫のふたりしかつくことはできなかった。キック力のない選手が途中でペースを上げると思っていたという大迫にとっては、予想どおりの展開。あとはスパートを放つだけだった。

「ラスト1周で勝負してもよかったんですけど、残り600mで前に出ました。誰かついてくるかなと思っていたので、余力を残して最後の勝負にかける感じだったんです。でも、スクリーンを見たら差が開いていたので、このまま引き離しにいきました」

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