増え続ける外国人研修生 不正行為の続出で移民論議が本格化
一方で、受け入れ側の手練手管もより巧妙化している。昨年11月、名古屋入国管理局は福井市のC縫製会社への立入調査を行った。偽造パスポートで入国していた2名の実習生が逮捕されたが、あわせてC社を舞台とした複雑な処分逃れのカラクリも明らかとなった。
C社は04年に実習生への賃金未払いなど不正行為が発覚し、3年間の受け入れ停止処分を受けた。だが処分から半年も待たずに社長夫人がC社工場のビル管理会社を設立。従業員など6人にペーパーカンパニーを立ち上げさせ、C社工場内に“出店”させた。その結果、C社は受け入れ停止前と同様に6社が受け入れた研修生・実習生に自社の業務を担わせた、というわけだ。また、第1次受け入れ機関のB協同組合傘下の岐阜市の縫製会社名義を使って、研修生・実習生を受け入れる「飛ばし」も行われていた。一連のC社の行為は処分逃れの疑いが濃厚だ。
C社で働く中国人実習生が声を上げたことで、基本給や残業代が最賃以下だったことに加え、基本給から4万円が不明朗に控除されていたことも判明した。一部は中国の送り出し機関へ、一部はB協同組合に渡ったうえで、残りの4000円から1万円前後が岐阜市に本拠を置くA事務所に“上納”されていたという。
A事務所は業界で「ゼロ組合」と称される、制度の趣旨に反する組織的ブローカーのような存在。本来、B協同組合のような1次受け入れ団体が行うべき入国管理やJITCOに提出する書類の作成、給与管理を集中的に引き受けて、企業への営業活動も担う。岐阜の「3大ゼロ組合」の一つであるA事務所は、Bなど五つの協同組合を傘下に収め、最盛期には1500人の研修生・実習生を差配していたという。最低でも月600万円が上納された計算になる。
ゼロ組合問題に詳しい、外国人研修生問題ネットワーク福井の高原一郎事務局長は「ゼロ組合の暗躍は制度が生み出した必然だ」と語る。90年代まで外国人研修・技能実習制度は、海外企業と関係の深い大手企業が単独で研修生を受け入れる「企業単独型」が過半を占めていた。
しかし今や、協同組合が1次受け入れ機関となり、会員企業に派遣する「団体監理型」の伸びが著しい。団体監理型は90年の大臣告示によって新設され、中小・零細企業による研修・技能実習生受け入れが可能となる道を開いた。実際、技能実習生を受け入れる7割強が従業員50人未満の零細企業だ。協同組合の設立認可は形式要件さえ整えば簡単に通るため、人手不足にあえぐ中小零細が形だけの組合をこしらえ、実質的な管理はゼロ組合に丸投げするというスキームが横行している。
外国の送り出し機関のブローカー化も見過ごせない問題だ。ベトナム人研修生の4割を送り出している同国最大の関連企業が愛知県内に設立した支社が、本来は1次受け入れ機関しか行ってはならない企業への営業活動を行っている疑いで、名古屋入国管理局が調査を進めている。同支社は最賃以下の残業代で来日前の研修生と契約。格安の労働力として企業に売り込み、研修生が疑問を抱いても契約書を盾ににらみを利かせている。前述の熊本県の実習生たちの送り出し機関も本人や親戚に「中国で裁判を起こす」「日本の暴力団に頼んで襲わせる」などと脅迫しているという。