増え続ける外国人研修生 不正行為の続出で移民論議が本格化
高額な保証金めぐり帰国トラブルも続出
こうした仕打ちに耐えていたのは理由がある。夏さんは来日前、中国側の送り出し機関に登録料と称する保証金5万元(約80万円)を支払っていた。夏さんの年収5年分に当たる高額な保証金は、両親や親戚に工面してもらっていた。しかも別途、父親と親戚の3人を保証人に立てており、何か問題があれば「違約金」として保証人が10万元(約160万円)ずつ支払うという一方的な契約を結ばされていた。
人手不足に悩む農家や縫製業者らが強気に出られるのも、こうした契約があるためだ。夏さんたちが不満を漏らすと、二言目には「やる気がないならまとめて(中国に)返すよ」「荷物をまとめて明日中国に帰れ」と怒鳴り散らしていたという。
天草の縫製業者らを訴えた中国人実習生の女性たちは、毎日ノルマを課されていた。朝8時半から平均して夜10時ごろまで、繁忙期には深夜3時まで働かされた。一部屋に12人も詰め込まれ、プライバシーなどまるでない。食事も自炊で、風呂も満足に入れなかった。しかも研修手当や賃金のほとんどは会社管理の口座に強制的に貯金され「自分の通帳を見られるのは給料日の昼休み1時間だけ」(原告の劉君さん〈23〉)。訴状によると、会社は無断で預金払戻請求書に署名押印し、彼女たちの預金を引き出して事業資金に充てていたという。この縫製業者は訴訟で「解雇予告手当を受領し実習生の身分を失った以上、在留資格はない。速やかに帰国して自国で生計を立てる以外に途はない」などと主張している。期間中に帰国すれば、保証金は返らず、違約金まで取られかねない。帰国をめぐっては多くのトラブルが生じている。
昨年12月、成田空港の一角が騒然となった。「今年はイチゴが不作なので帰ってもらう」。当日の朝、栃木県のイチゴ農家は中国人実習生5人に告げるや否や、警備員5人を伴って彼らを空港まで“連行”した。実習生から連絡を受けて駆けつけた全統一労働組合の組合員に救助され、あやうく強制帰国を免れた。実習生として同じ農家で働いていた郭棟さん(26)は「これまで仲間の強制帰国を3回は見てきた」と日常茶飯事であることを語る。
規制強化進むが手練手管も巧妙化
労働法規違反やパスポート取り上げなどの不正行為は、07年は449件に上り、過去最高だった前年から倍増している。こうした事態を受けて昨年末、法務省入国管理局は、彼らの保護強化を目的に、関連指針を8年ぶりに改訂した。「これまで何が不正行為なのかが不明確だった。今回、それを事前に明示し、実態調査を強化する」(審査指導官の石岡邦章氏)方針だ。