人事部が目覚めれば生産性は「10倍」上がる 八木洋介LIXIL副社長が語るワーク・ルールズ

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LIXILに来たときに、女性管理職比率が0.9%であることを知りました。「LIXILで働く女性はそんなに能力が足りないのか?」と言えば、決してそうではありません。だとすると、変ですよね。ならば、仕事ができる女性にも管理職になってもらえばいい。今は、女性管理職比率が7%になりました。人事はそういったことに取り組めばよいのです。

年齢が高いから偉いわけではありません。一番できる人に一番いい仕事をやってもらうように動いたり、環境を整えたりといった取組みを続けています。今は、100点満点で10点ぐらい。まだまだ完璧には程遠いとは思っています。

ただ、相手が7、8点だったら10点でも勝つのです。だから、必ずしも100点満点は取らなくてもいい。

日本中にすごい会社がそんなにあるわけではないし、私の頭の中では10点でも勝てると思っています。あのGEでも30点ぐらいだろうと思っていますから。さすがにGEが100点だと、追いつくのは難しいですが、30点ぐらいなら、いつかは追いつきたいですね。

「日本的人事」なんてどうでもよい

――八木さんの評価が自社他社ともにまだまだ低いことに驚きました。でも、考えてみると人事系のマネジメントや手法、企業文化についてなど、一般化しにくいこともあり、情報が少ない印象です。そのあたりの情報はオープンになっていくのでしょうか?

どんどんオープンにしていけばいいと思いますが、みんな真似できないんですよね。だから、オープンにしても怖くないのです。私は、LIXILでやっていることをどんどん話していますが、誰も真似しようとしないですからね。結局、どこへ行くかというと、ほとんどの人は「日本的人事」へ行くのです。

人事は会社を差別化する1つのファンクションなのです。日本的人事というのは、「日本の人事はこうだよ」ということ。だから日本的人事をやることは、「人事は差別化しません」と言っていることに等しい。こんなバカな話はありません。人事は経営資源の中で一番面白いものですし、何をやるかによって、ものすごくアウトプットが変わるものですから。

たとえば、システムなどを工夫することでよその会社に対して生産性が5~10%ぐらい変わることがあるかもしれません。でも人間は、先ほど申し上げたように5倍、10倍変わるわけです。ここを差別化しなくて、何を差別化するのでしょうか。私は、よそと違うことをやることによって差別化するのが一番の価値だと思います。だから日本的人事なんて、どうでもよいと思っています。

私は、「この会社に一番合った、この会社の社員が一番活力を出す人事をやろう」と言っています。だから日本の会社が一生懸命いろいろなルールを作っているときに、私はルールはいらないと言っているわけです。ルールがあればあるほど、人間というのは、やる気をなくすんだと。

人間はやはりサボってしまうので、ルールがなくてよいというものではないでしょう。だから、最低限のルールと、頑張ろうという意欲をどうやって引き出すかに人事の工夫というものがあるし、毎日いろいろなことが起こっていく中で、どういう言葉を発して、人の心を動かすことができるか。これこそが人事の最も大切なところだと思います。

砂流 恵介 ライター

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すながれ けいすけ / Sunagare Keisuke

1983年広島県生まれ。秋葉原のPCショップ販売員を経て、日本エイサーにて宣伝・広報を担当。2014年1月に独立。手段を選ばないゲリラ的なPRを得意とする。アメリカザリガニ平井のゲーム実況番組「スーパーピコピコクラブ」のメインMC、元JUDY AND MARYのTAKUYAが中心になって結成した「商店街バンド」の広報、攻殻機動隊REALIZE PROJECT編集長のほか、各種ネットメディアでの記事を執筆している。

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