しかし、リポーターの話から、地元の本気度が伝わってきた。同時に、四国の人々が、筆者のような「四国に新幹線ができることを想定していない」空気そのものに苛立ちを覚えているのだろう、と想像できた。
松山駅で見かけたポスターは、いわば想定の範囲内だったが、その直後、予想外の形で「四国の人々の苛立ち」に接する機会があった。友人と訪れた駅前の居酒屋で、若い女性店員と言葉を交わし、ふと「新幹線についてどう思うか?」と尋ねてみた。
そして「四国には絶対に新幹線が必要だ。新幹線のない四国には住みたくない。飛行機だけだと不便で料金が高い。松山ほどの市に新幹線がないのはおかしい!」という返事に心底驚いた。年齢は24歳という。新幹線にはあまり関心がなさそうな年代だ。店員さんは「日本のほかの地域には新幹線があるのに、四国にだけないのは不公平だ」と言葉を続け、筆者の驚きはさらに深まった。かつて何百回となく、青森県内で同じ言葉を耳にしていたからだ。
地域間競争「取り残される」不安
「四国新幹線」構想は、1973年に決定された2本の基本計画線から成る。大阪~徳島~高松~松山~大分を結ぶ狭義の「四国新幹線」、そして岡山~高松~高知を結ぶ「四国横断新幹線」だ。先行する「整備新幹線」5路線すらも長く足踏みを続ける中、他の基本計画線とともに構想が棚上げされてきた。
しかし近年、整備新幹線が相次いで開業する中で、建設を求める動きが活発化してきた。中心に位置するのは、徳島、香川、愛媛、高知の4県と四国経済連合会(会長=千葉昭・四国電力会長)などが1980年につくった「四国鉄道活性化促進期成会」(事務局・香川県交通政策課)をはじめとする組織だ。
基本計画線の「奥羽新幹線」「羽越新幹線」を抱える山形県、「東九州新幹線」構想のある大分県・宮崎県などでも、着工を訴える声は強まっているが、四国は活動量や情報の発信量が際立つ。
なぜ、四国新幹線が必要か。あらためて四国経済連合会に見解を尋ねてみた。「建設中も含めれば、新幹線は3分の2の都道府県に行き渡り、高速道路と並ぶ基礎的な交通インフラ。四国は沿線人口規模も北陸や北海道に遜色はない。このままでは地域間競争に取り残されてしまう。
特に人口減少対策が大きな課題で、交流人口の拡大、企業のビジネス環境の向上、若者の定着、移住促進などが重要」「これまで本州と四国を結ぶ3つの連絡橋の実現と高速道路の整備に全力を挙げてきたが、われわれ自身が新幹線について国に求めることをためらっていた。しかし、四国が一丸となって地元の熱い思いを国に伝えなければ、新幹線はいつまでたっても実現しない」といった回答をいただいた。
四国鉄道活性化促進期成会のサイトは「このままでは四国だけが新幹線空白地域となりかねないことから、経済発展や観光振興はもとより、災害に強い鉄道網の形成に貢献する新幹線について、地域の生き残りをかけて、真剣に議論しておくべき時期にきています」と訴える。
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