加えて、離脱派が重視したのは徹底した「イメージ」作戦だ。離脱派の急先鋒、イギリス独立党のこのポスターを見ていただきたい。難民が大挙してやってくるように見えるインパクトのある画像だ。人種差別的と批判されようとおかまいなし。画像や風刺漫画などビジュアルなイメージを多用したのも離脱派のキャンペーンの特徴だった。
こうしたアグレッシブな離脱派の旗振り役の一人が、ロンドン五輪を成功させたことでも知られる前ロンドン市長のボリス・ジョンソンだ。次期首相としても取りざたされるが、ざんばら髪と口角泡を飛ばすような語り口が特徴的な強烈キャラ。この人の来歴がまた面白い。
型破りなスポークスマン
そもそもは由緒正しい家柄で、オックスフォード大学も出た正統派であるが、高級紙デイリー・テレグラフ紙の記者として、ブリュッセルに駐在したこともあるバリバリのジャーナリストだった。ブリュッセル時代にEUの官僚主義に辟易として、それを揶揄し、バカにする記事を大量に発信し続けた。その際に彼が用いたのは、まさに「シングルイシュー」ジャーナリズム。「コンドームのサイズまで決められる」「掃除機の馬力まで規制される」などと、事実でない話も含め、ある一つの商品をめぐる論争をスキャンダラスに面白おかしく誇張して書き立てた。その多くが、「事実ではない」と批判を浴びたが、単純で、わかりやすく、斜に構えたスタイルはその後のEUに対するイギリスのジャーナリズムの基本形となった。
もともと、風刺やパロディーが大好きなお国柄。愛嬌とユーモアあふれるコミュ力をもつ、この型破りスポークスパーソンの存在も離脱派に勢いをつける要因となった。
離脱派のキャンペーンの主張には事実でない誇張されたデータやエピソードが多用されていた。「毎週3億5000万ポンドがEUに収められている」とセンセーショナルに唱えたが、それも実はウソ。多少インパクトのある事なら、ちょっとぐらい間違っていてもいい、というスタンスなのだ。
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