ドル安加速し95円へ、一方でユーロは底堅い

「EU分裂」よりも「大英帝国分裂」に現実味

こうしたドル相場に対する認識を踏まえた上で、円、ユーロの個別要因を検討する。まず円に関しては、過去の筆者の記事(『ドル円は購買力平価の100〜105円めざす』などをご参照)でも述べたように、6月に入ってから見られている「100~105円」という価格帯は、注目されやすい購買力平価(PPP)が密集するエリアになる。

そこへ至るまでのペースがあまりにも速かったという論点は別途あるものの、現状は然るべき水準に戻ってきたという認識が適切になる。1つのイメージとしては実質実効為替相場の長期平均への回帰を実現する95円程度が挙げられ、7~9月期には90円台を主戦場とする相場にシフトしていると予想したい。

脱落者が出ればドイツのウエイトが高まる

片や、ユーロはどう考えるべきか。今回の一件が政治同盟として平和を希求してきた欧州統合プロジェクトにとって史上最大の失敗であることは間違いない。それゆえ、ある程度は軟調な推移になるのは致し方ない。だが、結局はFRBの利上げが頓挫する中で、ユーロ相場は底堅さを維持するというのが筆者の基本認識である。

そもそも「政治同盟としての戦略破綻」と「残された加盟国から構成され存続する通貨ユーロの地力」が直結するとは限らない。過去のあまたの危機のときと同様に、今回も、EU崩壊をはやし立てる論調が散見される。だが、そのような声は往々にして行き過ぎである。

上述したように、離脱した英国にEUが手心を加えるはずもなく、今後、同国は「みせしめ」とされる可能性が高い。EUが離脱国としての「よいお手本」になれない限り、第二、第三の離脱国が表れ、EUが崩壊するというシナリオはあまり信を置けない。少なくとも崩壊を騒ぎ立てるのは英国経済の行く末を見守ってからでも遅くはないはずだ。

何より、世界最大の経常黒字と高めの実質金利というユーロの地力の強さは英国離脱後も変わるものではないため、通貨分析上、筆者はしっかりと考慮していきたい。事実、離脱決定後も大してユーロは売られていない。
英国のEU離脱がユーロ相場の動きに直結するかどうかは、結局のところ、ドイツを中心とする残された加盟国の今後の立ち回りに掛かっている。

むしろ、「共通通貨圏から脱落者が出るたびにドイツ・マルクに近づく」というのが本質に近いようにも思われる。柔軟な発想でユーロ相場見通しを策定していきたい。

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