夏に日本茶を売る「抹茶ビアガーデン」の秘密 都心のホテル龍名館が女性の心を掴んだ!

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お茶を使った食事のメニューも充実

ホテル改装以前には会席料理の店で、近隣に企業が多いという場所柄からも、接待用途のサラリーマンが多かった。しかし「これからは女性客を取り込まないと流行らない」と、ホテル改装を機に、30〜40代女性ターゲットとした店にシフトした。幸い、「伝統あるお茶の文化をもっと一般に広めたい」という発想から考案した日本茶レストランという形態も、女性のニーズとうまくマッチしていたようだ。

もう一つの勝因が、SNSによる口コミをうまく利用したことだろう。今の時代誰もが、飲食店で注文した料理をスマートフォンなどで撮影し、SNSにアップ、という一連の動作を儀式のように行っている。こうした風潮をキャッチし、「緑色のビールができないか」と、見た目のインパクトを第一にメニューを考案した濱田さんの戦略が、うまく当たったと言える。当然のことながら「一口飲んで、まずい!」ではなく、商品として通用するだけの、意外性のある新しい味を提案できたからこそ、多くの人の支持を得たのだろう。

別業態で「抹茶ビールバー」の展開も検討

龍名館では、ホテルを2件、レストランを3件経営しているが、将来的には、お茶をさらに伝えていくために、別業態として抹茶ビールバーなどの展開なども検討しているという。

こちらが人気の「ビアガーデンセット」

「昨今、日本茶ブームが少しずつ盛り上がりを見せている。また新たな視点による日本文化の見直しという意味で、インバウンドにも期待している」(濱田部長)。

昔はどこの街にも見られた日本茶の小売店は今、いつの間にか姿を消してしまっている。いっぽうで、お茶カフェや高級ペットボトル茶の発売など、日本茶の楽しみ方には多様化が見られる。中国から伝わり、日本の風土のなかで生活に根付いた日本茶。そうした伝統を背景とした奥深い魅力があるからこそ、さまざまな楽しみ方も可能になるのだろう。そしてビアガーデンもまた、日本で育ったひとつの文化だ。両者の出合いが将来的に定着することは難しいにしても、文化を残すためのひとつの提案として、画期的と言えるのではないだろうか。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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