対ロシア政策を巡ってドイツが揺れている EU団結に「亀裂」

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確実なことが1つある。独政界の動きが、対ロ政策についての議論に影響を与えているということだ。

事情通の関係者によれば、スタインマイヤー外相は、ここ1カ月、対ロ政策のトーンを和らげるよう、SPDのジグマル・ガブリエル党首から強いプレッシャーを受けてきたという。

象徴的な訪問

SPD党首のガブリエル氏は、来年の選挙においてメルケル首相に挑戦すべき立場であり、世論調査で苦戦しているSPDの人気を浮揚させ、メルケル首相が率いるCDUとの差別化につながるような争点を急いで集めている。

SPDとしては、対ロ政策から入るのは自然な流れだ。多くのSPD関係者にとって、ロシア政府に対する姿勢は、ブラント元独首相が1970年代に進めた「東方政策」、そして崩壊間近だったソ連による東西ドイツ再統一への支援がベースになっている。

SPDのシュレーダー元首相は、新聞紙上でのインタビューに応え、「ブラント元首相の『東方政策』の成功が無駄になるのを認めるわけにはいかない」と警告した。シュレーダー氏はプーチン大統領と親交があり、スタインマイヤー外相の指導者でもあった。

ガブリエルSPD党首は今月、ロシアを訪問し、モスクワ郊外の私邸でプーチン大統領と会談する予定になっている。

同じ27日には、ウクライナのグロイスマン新首相は初めてベルリンを公式訪問し、メルケル首相との会談に臨む予定だ。

この2つの会合の象徴的な意味には、ドイツの盟邦も関心を注ぐだろう。一部の国では、すでに制裁の段階的な解除が論じられている。

イタリアのレンツィ首相と欧州委員会のユンケル委員長は、先週セントペテルスブルクで開催されたロシア投資家のための大規模な会議に出席した。1年前には考えられなかった訪問である。

7月にEUの議長国の座を継ぐのは、対ロシア制裁に最も懐疑的な国の1つであるスロバキアだ。同国のライチャーク外相は20日、ルクセンブルクでロイターの取材に応じ、「(今回の)対ロ制裁延長の後で、制裁に関する政治的な議論を求める声が高まっており、実際に議論が行われると期待している」と語った。

(翻訳:エァクレーレン)

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