円安で稼いだ日本企業は、円高に震えている 経営者が頼れるのは、もはや賃下げだけ?

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円相場が1ドル=80円だった際、日本の多国籍企業が稼ぎ、日本に送金した1ドルは80円と計上されたが、円相場が1ドル=125円に下落すると、日本に送金された同じ1ドルが、今度は125円と計上される。

このため日本企業の海外子会社の利益が1ドル、1ユーロ、1ポンド、1ペソ、あるいは1人民元たりとも増えなかったとしても、自国での帳簿上では大幅な増益となった。現在の円高局面では、これとはまったく逆の現象が起きている。

円安という、会計上の幻影による利益を押し上げる要素がないと、日本企業は今後も賃金抑制に頼る公算が大きい。過去15年間、日本企業は売上高が減少しても利益を出す方法を学んだが、これは賃金削減によって実現したものなのだ。

稼ぎが減れば買わなくなる

日本の大企業5000社の値を合計すると、従業員1人当たりの売上高は1996年比で5%増加したにもかかわらず、賃金と手当は同年比で5%削減されている。この結果、大企業の従業員1人当たりの営業利益は同年比7割増加した。

しかし、企業の幹部が忘れてしまっていることがある。人々の稼ぎが減れば、企業の製品を買う人も少なくなる、ということだ。

週刊東洋経済6月25日号

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『The Contest for Japan's Economic Future: Entrepreneurs vs. Corporate Giants 』(日本語翻訳版発売予定)

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