ソフトバンク、アローラ氏「突如退任」の衝撃 ゲーム会社売却で8800億円獲得と発表直後に

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ソフトバンクは今回、スーパーセルを中国IT大手・テンセントに売却することで、73億ドル(約7700億円)と、ソフトバンクの子会社2社がこれまでに受け取った配当金を合わせて約8800億円の現金を手にすることになる。

これは投資金額の2.9倍で、年率換算の投資効率を示す「IRR(内部収益率)」は年93%と高い投資成績となる。売却の対価は今年8月(48%)と11月(50%)、3年後の2019年8月(2%)の3回に分けて受け取る形だ。ソフトバンクは今2017年3月期に6000億円程度のスーパーセル売却益を計上する見込みだ。

株主からの厳しい追及は必至

スーパーセルがソフトバンクの傘下に入ったのは2013年10月のことである。当初はソフトバンクとガンホーによる共同買収だった。当時の孫社長は、スマホ向けのコンテンツにおいて、全体の売上の8割、利益の9割はゲームが占めていることを指摘。「ゲームを制する者がスマホコンテンツを制する」とまで持ち上げていた。

互いに「長期のパートナー」と強調していたが、提携関係は3年足らずで終わった(撮影:尾形文繁)

買収後のスーパーセルの成長はすさまじく、2015年の売上高は2640億円(当時の3月のレートである1ドル=113.5円で換算)、買収前の2012年3月期の売上高がわずか94億円に過ぎなかったことを考えると、大化けしたといっていいだろう。ちなみに、この案件はアローラ氏が手掛けたものではない。

スーパーセルのイルッカ・パーナネンCEOはかねて、ソフトバンクについて「長期で支えてくれるパートナー」と強調してきた。昨年9月には東京ゲームショウのために来日。本誌の取材に対し、「孫社長は『ソフトバンクとして、スーパーセルを長く育てていきたい』と、長期の関係について思いを語ってくれる」と話していた。

ただ、買収当時から疑問視されていたように、これまでソフトバンクとの直接的なシナジーはほとんどみられなかった。以前、ソフトバンクショップで販促イベントを実施したことはあるが、ごく小規模なものだった。ガンホーも同様だ。スーパーセルと協力して欧米市場の規模拡大に挑んだが、期待した成果は得られず、わずか10カ月で提携を解消している。

相次ぐ売却と今回のアローラ氏退任との間にどのような関係があるのか。22日の株主総会では、ソフトバンク株主(3月末22万2448人)からの厳しい追及が待っているに違いない。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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