しかし運営上の失敗が重なり、ソフトバンクグループだった時期にCOMDEXは衰退。そうした中で、ゲイツ氏の基調講演の場もCOMDEXからCESへ移動した。そのゲイツ氏がマイクロソフトの経営の第一線から引退したことに伴い、2009年1月からはマイクロソフトCEOのスティーブ・バルマーが講演を引き受けていた。ところがマイクロソフトは昨年1月を最後にCESからの撤退を決断。講演だけでなく展示会への出展そのものも取りやめることを決めた。
アップルもマックワールドから撤退
なぜマイクロソフトは撤退したのか。表向きの理由は「自社開催のプライベートショーに専念したい」というものだが、CESの裏番組であるIDG主催の「マックワールド」の動向と関係しているだろう。
マックワールドはCESの会期に合わせて開かれていたアップル関連のイベント。スティーブ・ジョブズが基調講演に登場し、経営方針を明らかにし、重要な新製品を発表する場であった。ところが、2009年1月を最後に、アップルは「自社開催のプライベートショーに専念する」「アップルストアの展開により、ユーザーとの接点は整った」との理由により、マックワールドへの参加を取りやめた。ゲイツのいないCESは敵ではなくなってしまい、健康問題を抱えながらも出席する意味がなくなったのかもしれない。
「CESのゲイツ」と「マックワールドのジョブズ」という構図が崩れたものの、マイクロソフトとしてはこの年初のイベントに力を注ぐ意味があった。特等席として用意されている前日夜の基調講演は会期前のため、他のイベントとの重複がない。初日以降にもある他の基調講演とは比較にならないほど注目が集まるのだ。基調講演でのメッセージは必ず多くのメディアに取り上げられる。そのアナウンス効果は大きい。
ところが、である。2009年以降、マイクロソフトの基調講演の内容はあまり評判がよくなかった。話している内容がマイクロソフト製品の宣伝ばかりに偏っていることはともかくとして、営業・管理部門出身のバルマー氏そのものにも問題があった。ゲイツ氏は大きな尊敬を集める比類なきカリスマであり、それと同じことをバルマー氏に求めるのも無理があるのだが……。
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