安倍首相が有楽町での街宣を取りやめた理由 自民党は野党4党の動員力を恐れている

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自民党は19日午前11時からJR船橋駅南口前で、12時30分からJR市川駅北口前で安倍首相の街宣を計画。午後2時からJR有楽町駅前、4時からはJR吉祥寺駅北口でも街宣するはずだった。

ところが有楽町駅前の街宣は、急きょキャンセルされた。その理由は容易に想像できる。その日の午前には同じJR有楽町駅前で、野党4党と市民団体による街宣が行われることになっていた。同じ場所は避けようという意思が働いたのだ。

実際、野党4党と市民団体による街宣は熱気にあふれていた。「みんなのための政治を、いま。」――こう書かれた赤と青と白の三色のプラカードが一斉に掲げられ、舞台の上には若者たちが並んでいる。その脇をいくつもの青と白の風船が結び付けられ、踊っているかのように揺らいでいた。まるでお祭りのような華やかさに、足を止めて見る人もいた。この日が選挙年齢を「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法の施行日であったことも関係していたのかもしれない。

「昨年、安全保障関連法案を無理に採決したのがいけなかったねえ」。新聞社の取材に、初老の男性が答えていた。動員をかけられたと見られる聴衆の集団の外側でのことだ。これと同じくらいの“空気”を自民党が作れるのかというと、かなり困難だと言わざるをえない。強く動員をかければ人は集まるだろうが、人数で勝ててもノリでは勝てない。安倍首相が有楽町駅前での街宣をとりやめたのは、ある意味で賢明だったといえるだろう。

吉祥寺で目立った過激な野次

19日夕方に行われた吉祥寺駅前の安倍首相の街宣。「反安倍」を訴える人々も目立っていた(筆者撮影)

一方、午後4時から吉祥寺駅前で予定されていた街宣は決行された。

「吉祥寺駅は安倍首相が成蹊大学に通っていた学生時代に利用していた駅。だから東京での第一声を吉祥寺にした」。安倍首相の側近中の側近と言われる萩生田光一内閣官房副長官は、安倍首相と吉祥寺との浅からぬ縁を強調した。

自民党は東京選挙区で現職の中川雅治参院議員の他、元ビーチバレー日本代表の朝日健太郎氏を擁立している。ところが朝日氏の知名度がいまいちで、票が伸びにくい状態になっている。朝日氏をよりアピールするためにも、吉祥寺街宣は欠かせなかったのだ。

開始予定の10分前には、すでに駅前ロータリーは約3000人の聴衆で覆い尽くされた。駅の窓から見ている人もいる。ただ「反対派」と見られる人々の集団も目立った。彼らは「さよならアベノミクス」「NO NUKES」「NO WAR」などと書かれたプラカードをかかげ、丸川珠代環境相が街宣車の上で演説を始めると、「愚か者め」と野次を飛ばしていた。さらに安倍首相が姿を現すと、一斉に「帰れ」コールを始めた。

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