サミットの成果は、首相が自らひねり出した 見えてきた2本立ての経済対策

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議長国会見での安倍首相(写真:外務省)

伊勢志摩サミットが終わった。祖父が長崎で被爆した筆者としては、サミットより、オバマ大統領の広島訪問の方が、個人的には感慨を覚えるが、ほとんどの方が、特に経済政策面では、サミットで大いに成果があったとは感じにくいのではないだろうか。

安倍首相は、日本がリーダーシップをとって、財政政策により世界経済浮揚に立ち向かう、という形づくりをしたかったものと推察される。しかし、「主要な一次産品市況が55%下落し、リーマンショック時なみのレベルだ」というグラフについては、「今はリーマンショック並みの危機だとは思えない」という異論が出たようであるし、財政出動については、1週間前のG7財務相・中央銀行総裁会議と同様に、やりたい国が勝手にやればよい、という方向性となった。

安倍首相は、「威勢」よくサミットに臨んだが、経済政策面では「しま」った、という結果ではないか。「伊勢」「志摩」だけに。

見えてきた2本立ての経済対策

ただ、安倍首相の狙いが、参加各国の同意を心底得ることであったとは思えないし、その必要もなかったのだろう。サミットに関係なく、足元の国内景気はぱっとしないし、7月の参院選もある。リーマンショック並みの危機に陥る可能性があると日本側から一方的に説明し、(他国は同意しないかもしれない)財政政策について、日本側から一方的に打ち出すべきだと宣言した。自分でひねり出したお手盛り感のあるサミットの成果をもって、6月初の国会会期末直後とも見込まれている、経済対策の発表を打ち出す、ということなのだろう。

つまり、各国首脳が「今の世界経済がクライシスだ、というのは、安倍首相くらいです、危機のわけがない」と言っても、安倍首相は聞きわけがないのである。

当面の経済対策は、ざっくりと2本立てにまとめられる。選挙やサミットとは関係なく、いわゆる「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2016)が、5月18日の経済財政諮問会議ですでにまとめられているが、これが31日の閣議で決定される。このなかでは、GDP600兆円の目標のもと、東日本大震災からの復興、子育て支援、介護支援(介護離職者の解消)、生産性向上策(教育、研究開発投資等)、観光の基幹産業化や攻めの農林水産業の展開、東京五輪・TPP等への対応、地方創生などが盛り込まれている。

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