したがって、投資家たちの期待に沿っていくならば、政策をすべて実現していかないといけない。
だが、実現には大きなハードルがある。
それは国会の制約でも、自民党内の動きでもなく、投資家自身の移り気にあるからだ。
まず、利食い圧力がある。日本株に関しては、出遅れた多くの外国人投資家が買い上げてきたから、勢いは止まらなかった。だが、12月20日の日銀の金融政策決定会合で追加緩和、次回の決定会合でのインフレターゲットを議題に設定することを表明したことから、物理的に13年1月後半までは、明確な形をとった動き、材料がないからだ。ここで、いったん、日本株を利益確定の「売り」でポジションを落としておくのがセオリーだからだ。
ただ、円安、株高の流れは、世界的なリスクオンの動きに沿ったものであり、安倍自民党の動きは、いわばそれにレバレッジをかけたものに過ぎない。それゆえ、米国の「財政の崖」などの議論がある中でも、円安がさらに進めば、それによる株高はありうるので(実際、これまではその流れであったので)、利益確定売りが反転という形で、明確化されるかどうかは微妙である。
日銀に待ちかまえる複数の関門
しかし、より重要なのは、利益確定後の動きだ。今後も、円安、株高がトレンドとして継続することを投資家自身が求め、それを政策への要求として圧力をかけてくるだろう。それは、いわゆる催促相場となり、中期的には、まず、次の日銀の政策決定会合で、インフレターゲットが導入されるかどうかが第一関門となる。
インフレターゲットの導入には、私個人の意見としては反対だが、もうこうなったら入れるしかない。日銀としても、ここで入れないのは大きな摩擦となり、市場は混乱するだろう。もし、私が審議委員だったら、意見を翻して賛成に回る。
なぜなら、インフレターゲット導入は望ましくない、という結論に至った場合、投資家(およびトレーダー)と政治の圧力は、手に手を取って日銀へ向かってくるからだ。
つまり、両者が日銀の政策を非難し、そして、投資家の非難は、政治家とメディアの日銀非難を正当化するから、相乗効果で、日銀は一気に追い詰められると予想するからだ。
問題は、次の第二関門にある。2%というインフレ率をどう受け入れるか、ということだ。
目途をターゲットに変え、日銀に責任を持たせるのは構わない。もともと、日本経済に責任はあるし、物価のコントロールが仕事だから、インフレターゲットが存在し、それに沿った金融政策を行うのは理解できる。
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