淘汰進む韓・中造船 消耗戦でも大手は残る 台頭したアジア造船産業の今

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この海洋構造物は、世界でも韓国の独壇場。かつて日本の造船大手は巨額の赤字を計上して市場撤退したが、「韓国は製造技術や契約形態に至るまで、日本の失敗を分析し、利益が出せるビジネスに転換した」(海洋産業関係者)といわれる。

中国造船大手も海洋構造物で韓国を追う。海洋資源開発は国家5カ年計画の目玉。国を挙げて海洋機器の国産化と技術獲得を急いでいる。

海運界に波紋を投げ掛けたプロジェクトとは?

その中国で最近、世界の海運界に波紋を投げかけているプロジェクトがある。国営海運会社らによる大型タンカー(VLCC)50隻の大量発注計画だ。狙いは自国内造船所の操業対策。50隻すべて中国内の造船大手に発注される見通しにある。

「なりふり構わぬ支援が始まった」。日本の造船幹部はまゆをしかめる。中国、韓国の政府による造船支援策は、こうした内需創出から低利融資、技術開発助成、艦艇輸出のお膳立てまで多岐にわたる。その恩恵を受けるのは、基本的に造船大手。「政府や金融機関は、造船大手は潰さないだろう」。業界ではそういう共通認識が醸成されつつある。

実は、両国政府の造船対策は、日本が反面教師になっている。過去の第1次、第2次造船不況において、日本は当時の運輸省主導による一律均等の造船能力縮小を図った。この政策が「中小に配慮して大手の競争力をそぎ、日本造船業の凋落を招いた」(韓国政府系シンクタンク)と分析されている。

中小の造船所は自然淘汰に任せ、大手にリソースを集約させて競争力を高める──。これが韓国や中国の政府による造船不況克服のシナリオだ。韓国・中国の大手造船所は、淘汰戦で傷を負いながらも生き延び、より強くなる可能性が高い。日本の造船業にとっては、今回の大不況克服後もアジアの残存強者との戦いが待っている。

対馬 和弘 海事プレス社『COMPASS』編集長
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