トランプ対ヒラリー、「嘘つき」のたたき合い

どちらが手のつけられない大嘘つきか?

そうしたアラ探しの一部に、ジャーナリスト自身のトランプ氏に対するどうしようもない嫌悪感が反映されていることは認めなければならない。自分の納税証明書を調べても「何も分かりはしない」というトランプ氏の主張は「ピノキオ4人分」に値するだろうか。いや、納税証明書が公表されるまでは誰にも分からない。

トランプ氏が「職探しをやめてしまったら実質的に就業者と見なされるのだから、公式の失業者数はデタラメだ」と言うとき、その表明は米政治ニュースサイト「ポリティコ」の「嘘リスト」に掲載されるのだろうか(「就業者」とは呼ばれないが、失業率にはカウントされないのは確かだ)。

なぜ嘘が支持率低下につながらないのか

とはいえ、紛れもない虚偽だけでも十分たくさんあるように思われる。では、なぜこうした嘘が支持率低下につながらないのか。それは、ジャーナリストらが説得を試みている人々がトランプ氏を支持している理由は、まさに、金と権力を十分に持っているトランプ氏が自分たちに代わってそうしたジャーナリストたちを懲らしめてくれると思っているからなのだ。

クリントン氏は1つとして深刻な嘘を発見されていないため、批判する側としても、彼女が起訴でもされない限り、これを大統領選における主要な争点にすることはできない可能性が高い。彼女に打撃を与えるのは「嘘」ではなく、起訴されるという事実だろう。

同様に、トランプ氏の批判者が、同氏の「嘘」に基づいてその力をそぎたいと考えるならば、彼の発言を否定してもダメだ。そうではなく、「オズの魔法使い」の物語と同じように、トランプ氏が実際にはそれほど偉大でも有力でもないことを彼の支持者に示さなければならないだろう。支持率の急激な低下を引き起こす可能性が高いのは、トランプ氏の嘘を証明することではなく、彼の弱みを暴露することだろう。

恐らくこうした理由から、トランプ氏は、トランプ大学をめぐる訴訟を担当する判事は「メキシコ系」であるため利益相反の立場にあるという批判を取り下げないものと思われる。もし連邦裁判所でトランプ大学が詐欺を働いていたという判決が下れば、トランプ氏は、彼が何よりも好まない「敗者」というレッテルを貼られることになるだろう。

両候補のいずれかが窮地に追い込まれるとすれば、その原因は彼らが何を言ったかではない。両候補の、もっと本質的な弱点が原因になるだろう。

Suzanne Garment/筆者は弁護士で「Scandal: The Culture of Mistrust in American Politics」(スキャンダル:米国政治における不信の文化)の著者

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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