投資家は東洋ゴムの惨状に愛想をつかした 業績は反落、改革を担う会長が突如辞任

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2015年3月の不祥事発覚後、問題となった東洋ゴムの免震ゴムを視察する民主党(当時)の議員団(撮影:大澤誠)

今年4月末時点で、昨年3月発表の55棟の中の17棟が着工し、うち10棟が完了、同4月発表の99棟の中の5棟が着工し、うち3棟が完了にとどまる。まだ先行きは遠い。55棟については、ブリヂストン製の高減衰ゴムで代替が可能だが、99棟のうち大半は代替品がなく、自社製品を再生産しなければいけないが、これには国交省や第三者委員会の立ち会いを受けながら検証作業も進めることになるため、時間がかかっている。

付帯工事にも想定以上に時間とコストがかかることがわかったという。単純にジャッキアップして該当製品を交換するだけなら、1基あたり500万円程度で済むが、免震装置周辺に様々な設備が組み付けられている場合が多く、配管を動かすなどの作業が必要になる場合もある。工事期間中に休業する店舗の補償費用も膨らんでいる。このため、当初見込まれた150億円(500万円×3000基)を大きく上回る費用負担が生じている。

新旧の経営陣に対する株主代表訴訟の請求

免震ゴムをめぐっては、四半期ごとに追加の特損が発表され、前期までで466億円の関連特損を計上した。5月17日にはこの466億円について、新旧経営陣19人に払わせるよう関西在住の個人株主から同社監査役へ提訴請求も出されている。60日以内に責任追及などの訴えを東洋ゴムが提起しない場合は株主代表訴訟も検討しているという。

ただ、関連特損は466億円では済まなかった。今期の第1四半期(16年1~3月期)には、関連特損が新たに92億円発生し、総額は558億円に膨らんだ。会社側は引当金については、監査法人の指示に従い合理的に見積もれる額は、その都度すべて引当てていると説明するが、交換工事がまだ大量に残っており、難しい集合住宅の案件などもこれから、ということを考えると、今後特損が増える可能性も残る。さらに、規模は小さいものの2015年10月に防振ゴムでも不正行為が明らかにされており、この分の特損は現時点では未計上のままだ。

度重なる不祥事と、見通しの甘さ、ガバナンスにも不安が残り、株式市場からはすっかり信頼を失ってしまった感がある。

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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