日本人唯一のエアレーサーは何がスゴいのか 世界を転戦する室屋義秀選手の操縦機に同乗

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エアレーサーの室屋義秀選手

他媒体の連中と「早く飛びたいよね」「飛べなかったらここまで来た意味ないよね」などと語り合った。それは嘘ではないが、半分くらい飛べなくてもいいかなと考えていた。怖い。実は数年前にもここふくしまスカイパークで室屋選手が操縦する飛行機に乗せてもらった経験があるのだが、そのことを知るスタッフが「エクストラ300Lは前回のセスナみたいな機体とはわけが違いますよ」と耳打ちしてきたからだ。え、前回のも十分スリリングでしたけど? それを聞いて天候回復を願う気持ちが少し弱まった。

待っている間、室屋選手に話を伺うことができた。

──日本でのエアレースが近づいてきましたが、調子はどうですか?

室屋:昨年は直前に機材を変更するなど、バタバタの状態で出ることになってしまったんですが、今年は機材、チーム体制、自分自身の調子などがそろって万全に近いかたちで出られそうです。

──やはり自国開催というのは地の利があるのでしょうか?

室屋:間違いなくあります。スタート前などに上空から皆さんの応援がよく見えて気分がアガりますから。

──ブライトリングのサポートについては?

室屋:1995年に兵庫県の但馬飛行場で初めて曲技飛行を見たのがきっかけで、僕はこの世界にどっぷりと浸かることになったんですが、その初めて見た飛行機に「BREITLING」と書かれていたのを今でも覚えています。すべてのパイロットの憧れであるブライトリングに支援してただけるようになって幸せですね。

「いけそうです!」

そうこうするうち、遠くから「いけそうです!」という声が聞こえた。え、いけるの? いけちゃうの? 顔で喜び、心で戸惑ったあの時の僕は周りからどう見えていたのだろう。いつまた強風がやってくるかわからないため、スタッフの急ぎ方がハンパない。何人かが飛び立っては帰ってくるのを眺めていたら、スタッフにツナギを着るよう命じられた。着たら今度はパラシュートを含むハーネスを装着された。

「この部分に足をかけて乗り込んで」「飛行中、あらゆるレバーやペダルに触れないで(前席でも操縦できるようになっている)」「シートベルトが緩すぎないか確認して」と、よけいなことを考えないようにさせるためか、いくつものことを指示される。

エクストラ300Lに搭載されるエンジンは、排気量540キュービックインチ、すなわち約8800ccの水平対向6気筒で、2700rpmで最高出力の300馬力を発揮する。空冷の水平対向なので、アイドリングではバタバタと昔のビートルやポルシェのエンジン音を立てる。ただし大排気量なのですごく野太い。そして離陸前最後の指示が、冒頭で述べた「どうしてもダメというときは挙手してください。ハハハ」というやつだ。 

エアレーサー室屋義秀の世界──最高のスリルはここにある その1
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