「ROE改善幅が大きい」100社ランキング 2016年度に伸びる会社は一体どこだ?

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改善幅トップは九州電力だった。ただ原子力発電所2基の再開や原油価格下落の効果によって、1000億円超の赤字から黒字化したことが大きな要因だ。アイフルや関西電力などトップ5社はすべて赤字からの「黒字転換」組になる。

そういう点では6位のアダストリアが実質的にトップといえるかもしれない。同社はカジュアル衣料「グローバルワーク」などをSC中心に展開する。2015年度は既存店売上高が好調、値引き販売も減ったことで大幅な増益になった。7位のスタートトゥデイは衣料品のネット通販「ZOZOTOWN」が牽引する。

昨年は発行済み株式総数の約4.4%の自社株を取得、そのうち半分を消却するなど、資本効率の改善にも努めている。ほかにも10位の創薬ベンチャー、ペプチドリームや、資材ネット通販を手掛ける15位のMonotaROなど、上位には創業から日の浅い、業績好調な企業が目立つ。

また、改革元年だった2015年度の特徴として「これまでROEとは縁遠かった企業が変わりはじめた」(野村証券の西山賢吾シニアアナリスト)ことが挙げられる。代表例が11位のゼネコン大手・鹿島。3人の社外取締役を入れて企業統治を強化。業績も東京五輪をにらんだ受注増などで大幅な増益になったうえ、増配も実施した。ほかにも大成建設や大林組など、業績改善を背景にゼネコン大手が上位にランクインした。

実は高ROE企業は内需系に多い。業種別にROEを調べてみると、トップがサービス業の17.75%。次いで空運業、水産・農林業、さらに情報・通信業、小売業、不動産と続く。その後にようやく自動車などの輸送用機器が登場する。

「自社株買いは最も安易な選択肢」

ただ先ほども書いた通り、時価総額上位の企業全体で見れば、2015年度は好業績でありながら、ROEは改善しなかった。

2016年度の企業業績はどうなる?(撮影:尾形 文繁)

もともと日本企業のROEは低い。英米企業の平均が14%近いのに対し、日本企業の平均は5%半ばにとどまる(2009~2013年の平均、柳良平・著『ROE改革の財務戦略』)。換言すれば、日本企業は長いデフレ基調の中で現金を手元に貯め込み、いまだにそれらを有効に使えてはいないのだ。

貯め込んだ現金を何に使うか。自社株買いは一つの選択肢だが、ある有力企業の経営トップは「経営者から見れば、自社株買いは最も安易な手段。うちはほかにおカネの使い道がないと宣言しているようなもの」と言う。「企業は成長してナンボ」(同)とすれば、設備投資や研究開発などで将来の「種」を作り、それを収益を結びつけていくことが重要になる。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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