小田急「複々線化」後に恐れる意外な路線は?

ライバルも「座席指定」「乗り入れ」などで対抗

混雑緩和も小田急を選んでもらう際の有力な武器になる。新聞・雑誌を楽な姿勢で読める状態で通勤できるというだけではない。最近話題の朝の着席保証型の列車についても、「複々線化によって朝のダイヤに余裕ができれば、当然、導入について検討する可能性はある」(小田急)。朝にゆったり座って通勤できれば、小田急のステータスはかなり向上するだろう。

では、複々線化後、どの路線の利用者が小田急線に流れるのだろうか。まず考えられるのは、小田急の北側を走る京王線だ。両者とも新宿を起点としており、永山、多摩センターには両者が乗り入れる。2014年度における多摩センターの1日平均乗降人数を比較すると、小田急が4万8554人、京王8万4345人と京王がリードしている。この勢力図が複々線化で変わるかもしれない。京王は2018年春から座席指定列車を5編成導入することを発表している。「利用者アンケートで要望が高かった着席ニーズに応えることが主目的」と京王側は説明するが、小田急対策と考えても不思議はない。

最大のライバルは相鉄か

小田急の南側を走る東急田園都市線の利用者の一部も小田急に流れそうだ。ただ、田園都市線は慢性的な混雑を解決できないでいる。「田園都市線の利用客の一部が小田急に流れてくれれば混雑解消に寄与する」(東急関係者)。東急にとっては、小田急複々線化はむしろありがたい話なのかもしれない。

他路線への乗り入れで利便性向上を目指す相鉄線(撮影:風間仁一郎)

小田急が脅威に感じているのは、おそらく相鉄だろう。小田急と相鉄は海老名や湘南台で競合関係にある。2014年度における海老名の1日平均乗降人数は小田急13万5861人、相鉄11万3106人。湘南台が小田急8万8380人、相鉄2万7052人でどちらも小田急が優位に立つ。

しかし、相鉄は2018年度内にJR線、2019年4月に東急線に乗り入れる計画となっている。現在は横浜で他路線に乗換える必要があるため、相鉄の利便性は劇的に改善する。新宿、渋谷、目黒などのターミナル駅までの所要時間は3~16分程度短縮される。しかも、海老名や湘南台は相鉄の始発駅なので、座って通勤できる。

東急線については渋谷まで乗り入れるか、目黒線に乗り入れて目黒に向かうか決まっていないが、相鉄ホールディングスの林英一社長は「両方に乗り入れたい」と期待する。さらに渋谷や目黒の先にある地下鉄線との直通運転についても相鉄は意欲を見せる。これらが実現すれば、相鉄の利便性は一気に高まる。

小田急は複々線化による増収効果として「2020年度で50億円程度を目指す」としている。旅客運輸収入ベースで4.3%増。輸送人員に換算すると、1日平均で利用者がおよそ8~9万人増える計算だ。しかし、「2020年度」目標をあえて掲げたということは、2018~2019年度については相鉄の都心乗り入れで相当数の利用者が相鉄に流れることを覚悟しているに違いない。"伸びしろ"をどこまで活用できるか、各社のせめぎ合いは激しさを増す一方だ。

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