小田急「複々線化」後に恐れる意外な路線は? ライバルも「座席指定」「乗り入れ」などで対抗

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まず混雑緩和である。現在、小田急線の最混雑区間である世田谷代田―下北沢間の混雑率はおよそ189%。隣の人と体が触れあい、かなり圧迫感がある状況だ。本数増により、混雑率は新聞・雑誌を楽な姿勢で読むことができるとされる160%程度まで緩和されるという。「小田急は混雑しているというイメージを払拭したい」(前出の担当者)。

続いて、所要時間の短縮である。たとえば、朝ラッシュ時に町田―新宿間は48分かかるが、複々線化後は10分短縮され38分となるという。同様に小田急多摩センター―新宿間は現行の45分から40分に短縮される。

小田急線は東京メトロ・千代田線に乗り入れを行なっているが、複々線化によってピーク1時間当たり5本の千代田線直通列車が一気に12本に増える。つまり、現行ではピーク1時間当たり新宿方面22本、大手町方面5本だが、これが新宿方面24本、大手町方面12本となり、都心中心部方面へのアクセスが大きく改善されるという。

なお、複々線化は東京都が事業主体である連続立体交差事業と一体的に進められている。立体交差事業は「開かずの踏切」の廃止を目指したものだ。2013年3月までに東北沢―和泉多摩川間の踏切39カ所が立体交差化によって廃止され、交通渋滞の緩和や踏切事故の減少といった効果が表われている。

小田急の投資額は3100億円

良いことずくめの複々線化だが、ネックは多額の費用がかかることだ。小田急が負担する投資額は約3100億円。同社の2016年3月期の当期純利益は274億円なので、その10倍以上の規模である。これだけの投資を行なうからには、利用者の通勤が快適になったというだけではすまされない。収益面での見返りが必要だ。小田急サイドも当然のことながらソロバンははじいている。収益の源泉は、利便性の向上による他エリアからの利用者流入だ。

「鉄道の乗車時間として40分圏内に収まることが重要な鍵を握る」と、小田急の担当者は言う。不動産情報サイト「アットホーム」が都内に勤務する子持ちのサラリーマン583人に行なった調査によると、自宅から会社までの通勤時間の平均は58分。仮に自宅から駅まで10分、駅から会社まで10分かかるとすると、サラリーマンが電車に乗っている平均時間は約40分ということになる。

朝ラッシュ時、町田から新宿までの所要時間は48分。小田急多摩センターから新宿までは45分。どちらも平均よりも時間がかかっている。しかし、複々線化によって町田や多摩センターは40分圏内に収まる。遠いというイメージが払拭され、人口流入が期待できるのだ。

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