原発事故「自主避難者」が主張していること 住宅の無償提供支援打ち切りに抗議
もっとも、都営住宅の入居はきわめて狭き門だ。15年11月の都営住宅(一般募集)の抽選倍率は平均で26.2倍。障害者や高齢者、一人親であれば、避難者も含めて当選率で5~7倍の優遇があるものの、「落ちる可能性のほうが高い」(前出の熊本さん)。
神奈川県川崎市の民間アパートで高校3年生の二女と避難生活を送る松本徳子さん(54歳)の携帯電話には「来年3月末で住宅支援が終了するがどうしますか」との連絡が最近、福島県の担当者からあった。「私だけでは判断できない」という松本さんは、「体調も思わしくなく、今は仕事もない。住宅支援を打ち切られると生活が成り立たなくなる」と語る。
避難指示区域以外の地域からの避難であるため、自主避難者は「自己都合で避難している」と誤解されることが少なくない。だが、一人一人の事情は想像を超えるものであり、原発事故被害の深刻さを改めて認識せざるをえない。
「今すぐ自宅に戻って暮らすことはできない」
前出の松本さんの場合は、「二女の鼻血や下痢が続いたことが避難を決意した直接の理由。もしそれがなかったら、郡山の自宅にとどまっていたと思う」と話す。
渡辺加代さん(40歳)は、数年後に取り壊しが予定されている山形県米沢市内の雇用促進住宅で3人の子どもと避難生活を続けている。避難元の福島市の自宅周辺では、事故直後に市民グループに測ってもらったところ、毎時1~2マイクロシーベルトの高い空間線量が計測された。自宅内でも、事故前の10倍にも相当する毎時0.5マイクロシーベルトもあったという。「子どもが鼻血を出し、私もかゆみがひどくなり、このまま住み続けることはできないと決意した」(渡辺さん)。
現在も自宅の庭には除染した土が埋まっており、除染後も元の地区の中学校の敷地からは高い数値の放射性物質が検出されたという。そうしたこともあり、「今すぐ自宅に戻って暮らすことはできない」と渡辺さんは考えている。
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