消費増税は永久に先送りできるものではない

将来の大きな増税は日本のためになるのか

しかし、この効果は、消費税率引上げのときだけ生じる特殊なものではない。同じ効果は、輸入原材料価格の高騰に伴い生じる消費者物価上昇によっても生じる。なぜなら、物価が上がって購買力が落ちる意味では、消費税率引上げでも輸入原材料価格高騰でも同じだからである。

さらに言えば、目下政府が目指しているデフレからの脱却が実現する過程で、2%程度の物価上昇が恒常的に起きることから、消費税率を2%引き上げるときとほぼ同じ効果が消費者物価上昇率に表れる。それが、家計の購買力を落とすことになる。

経済成長と財政健全化を両立させる道

2017年4月に税率を2%引き上げることで、家計消費の深刻な落ち込みを懸念するならば、同時期に物価目標を達成すべくデフレから脱却して同程度に物価が上昇すれば、同様に家計消費の深刻な落ち込みが起きることを懸念しなければならない。消費税率引き上げに伴う家計消費の落ち込みを懸念する一方で、デフレから脱却するときの物価上昇に伴う家計消費の落ち込みをまったく心配しないということでは、論理的に矛盾する。

だから、デフレ脱却してからでなければ消費税率は上げられない、といえども、デフレから脱却しようとしても物価上昇のせいで消費が伸びずに経済がいつまでも低迷したままとなり、何の解決にもならない。

家計消費の低迷を克服するには、実質賃金が安定的に上昇するのに十分なほど労働生産性が上昇する必要があり、生産性向上の取り組みは消費税率引上げと同時に実施できる。また、厳しい財政状況で長続きする財政出動ができない以上、財政出動で着実な賃上げは起こらないことは、前掲拙稿「家計所得低迷の原因は、実質所得低迷にあり 消費増税のせいにしていては何も解決しない」で詳述した通りである。デフレ脱却まで消費増税先送りではなく、生産性向上とセットで消費増税という政策選択が、経済成長と財政健全化を両立させる。

消費税率は、遅かれ早かれ、引き上げざるを得ない。消費増税を再先送りしても、増税から逃れることはできない。高齢化が宿命的にさらに進み、医療や介護などの社会保障費はますます増加する。それは、行政改革をして経費を節約してもそれを上回る勢いで増加するし、経済成長率を上回る増加率で増加するから、今の税制・税率のままで確実に増大する社会保障費の財源を安定的に賄うことはできない。

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