三菱重工と事業統合、世界3強狙うニチユ フォークリフト業界再編へ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
(ニチユの「プラッターFBRM15-H75」)

両社はこれまでも協力関係を築いてきている。07年6月には、三菱重工がニチユの第三者割当増資を引き受けて筆頭株主となり、09年4月には、国内の販売事業を統合して合弁会社を設立。この12年11月には、三菱重工のフォークリフト生産体制再編の一環として、国内向け小型車のニチユへの生産委託を公表したばかりだった。

バッテリー式とエンジン式で補完

ニチユは売上高の9割弱を国内市場向けが占めているが、今後、大きな伸びが見通しづらい。海外展開のための製品ラインナップの拡充、コスト競争力強化、販路開拓が課題となっていた。

これとは対照的に、三菱重工のフォークリフト事業は海外売り上げが9割に達する。ただ、最近では先進国を中心に、商品の主流がエンジン式から、排気ガスを出さないため倉庫内作業にも向くバッテリー式へと移行が進んできており、バッテリー式を含めたラインナップの強化や物流ソリューション提案力を高める必要があった。

国内バッテリー式中心のニチユ、海外エンジン式中心の三菱重工と、製品および商圏が異なる両社にとって、事業統合による補完効果は大きい。部分的な協業では実現できなかった製品拡充や販売ルートの共通化に加え、世界3位級へと事業を拡大させることによって、原材料調達から始まり、生産や設備、人員配置の最適化まで、規模のメリットの追求、シナジーの発現が見込まれる。

事業承継の対価として、ニチユは三菱重工に普通株式および議決権のない種類株式を割り当てる。事業統合後のニチユに対する三菱重工の議決権割合は49.4%となるが、実質支配力基準によって、ニチユは三菱重工の持分法適用会社から連結子会社へと移行する。普通株式と種類株式を合計した三菱重工の株式保有割合は64.75%。ただし、ニチユは上場会社として従来通り独立した運営を維持していく方針だ。

今回の新株発行によって、ニチユの株式には希釈化(種類株式を含めた場合、希釈化率は約27%)が生じる。ただ中長期的には、ニチユ単独では難しかった海外攻略のスピードアップなどを始め、さまざまな形での事業統合のメリットが期待できそうだ。

水落 隆博 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事