阿蘇山「カルデラ噴火」が、日本を壊滅させる 火砕流に覆われる領域で700万人が「瞬殺」

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「先生のおっしゃることはよく理解しております。しかしながら関連予算に限度がある以上、低頻度で100年以内に起こる確率が低い災害に税金を投入する訳には参りません。もっと身近に起こる災害や事故、たとえば豪雨災害や交通事故、それに巨大地震などの対策を優先せざると得ません。その点をご理解いただきたいと存じます」

慇懃無礼とまではいわないが、強い意志を感じる言葉である。

しかし実際に4年前に、地震学者にとっても「想定外」であった1000年に1度と言われる低頻度の地殻変動が起こっている。そう、東日本大震災だ。この未曾有の災害は、最大遡上高40メートルの津波を起こし、1万8000人を超える死者・行方不明者を出した。さらにはあのフクシマの惨劇を生んだ。

また、1995年に起きた兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の30年間発生確率を求めると、なんと0.02~8%という数字になる。これほどの低い確率であったにもかかわらず、その翌日にはあの惨劇が起きたのだ。

このほかにも、地震発生確率が極めて低いにもかかわらず、その直後に地震が発生した例は多い。これらの事実を真摯に受け止めるならば、私たちは、日本列島はいつどこで地震が起こっても不思議ではないと認識すべきであろう。

災害が起きてからリスクを検討するのは遅い

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確かに貴重な税金を投入して国民が安全に安心して暮らせるような対策を講じるのであるから、優先順位をつけた上で慎重かつ迅速に実行すべきである。しかしその際に大切なことは、何をもって順位付けを行うかである。

ある災害や事故が起きて、その影響が甚大であったのであわてて同様のリスクに対して検討するのでは、あまりにも場当たり的だ。またこのような対応では、余計な力学が働いて本当はそれほど重要度も高くないにもかかわらず、巨額の税金が使われることもあるに違いない。

実際3.11の復興事業でも、よからぬ思惑で不適切な事業が実施された。しかしこれではあまりにも不条理である。つまり、優先順位付けは合理的な判断基準に基づいて検討されるべきだ。

巽 好幸 神戸大学海洋底探査センター長

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たつみ よしゆき

1954年、大阪府生まれ。理学博士。専門はマグマ学。1978年、京都大学理学部卒業。1983年、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。京都大学総合人間学部教授、同大学大学院理学研究科教授、東京大学海洋研究所教授、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球内部ダイナミクス領域・発展研究プログラム・プログラムディレクターを経て、2012年より、神戸大学大学院理学研究科教授。2016年より神戸大学海洋底探査センター長。2003年に日本地質学会賞、2011年に 日本火山学会賞、2012年に、米国地球物理学連合(AGU)ボーエン賞を受賞。著書に『地球の中心で何が起こっているのか』(幻冬舎新書)、『なぜ地球だけに陸と海があるのか』『和食はなぜ美味しい――日本列島の贈り物』(ともに岩波書店)、『地震と噴火は必ず起こる』(新潮選書)などがある。

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