「ショッピングモールに来るのはなぜか」と問われたら、答えは「買い物をしたい」に決まっているだろう。もし会議室にいたら、そう決めつけていたかもしれない。しかし、ショッピングモールに来ているお父さんから返ってきた答えは意外なものだった。
「どこに行っていいのかわからない。だからショッピングモールにきている」
返ってきた答えから、ある本音が透けて見えてきた。ショッピングモールは、手軽な「家族サービス」の手段だ。本当はショッピングモールだけではなくいろいろなところに出かけたいし、家族を連れていきたい。だけど、お出かけ先やアクティビティについて調べる暇もない。結果、子どもも楽しめて、奥さんも買い物できるショッピングモールに、ついつい行ってしまうだけだったのだ。
中古車を売るんじゃなくて、おでかけを売ろう
そんな生活者の本音にガリバーは何ができるのか。担当者に対してさまざまな問いをぶつけていく中で、1つの思いが見えてきた。それは「車を売りたいのではなく、多くの人に移動を通じた体験を楽しんでもらいたい」思い。さらに、ガリバーの社員には、車好きの人が多く、千葉のおでかけ情報は、足元にあったのだ。ショッピングモールの家族連れに、おでかけ情報をシェアしてしまえばいい。ショッピングモールをおでかけの終着地にするのではなく、「おでかけが始まる場所」にしてしまったらお父さんもお店にきてくれるはずだ。
そこで私たちは「中古車屋」を作ることをやめることにした。車を並べて待っているだけではなくて、房総半島のおでかけ情報も提供することにしたのだ。房総半島のおでかけパッケージを作って販売したり、「普段乗っている車とは違う車でおでかけしたい」という生活者の声に応えるために、あこがれの車をレンタルできる「おでカー」もスタートしたりした。
「ペットとおでかけしたいけれど、ペット同乗不可のレンタルカーが多い」。そんな声から生まれた、ペット同乗可のキャンピングカーのレンタル。バイクのレンタルサービスや、東急ハンズのおでかけを楽しくする雑貨の販売など、目指す方向がクリアになったことで、多くの企業が賛同し、「おでかけが始まる場所」が生まれたのだ。
晴れてショッピングモールの中にある中古車屋は無事オープンし、家族も気軽に訪れるようになり、見込み顧客との関係を構築できるようになった。中古車の販売も好調。なんと、わずか1年で、全国のガリバー販売店で業績1位となった。ガリバーはHUNT同様の形態で4店舗を出店するまでになっている。どう売り上げを上げるかと考えたらきっと中古車を面積いっぱいに並べる店舗になっていたかもしれない。
だが、ショッピングモールにいく家族と中古車屋のつながりをどう作るかという問いは、おでかけの終着駅だったショッピングモールを「おでかけが始まる場所」に変える力を持っていたのだ。売り上げをあげようと焦るあまりに見えてこない景色も、おでかけ同様に寄り道も楽しめると新しい景色が見えてくるかもしれない。
(記事中の写真はガリバーインターナショナル提供)
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