支援学級・学校へ押し出される子どもたち 発達障害に寄り添って小学校を「壁」にしない
同市教育委員会の渡部一夫指導主事は、「すくすく」実践後の変化は、早くから児童の特性に合ったアプローチができるようになったことだという。
「1年ごとに担任が代わる学校現場でも、保護者、他職種・他機関と児童の情報を共有しながら、途切れずに連携できるようになりました」(渡部さん)
学校生活では、医療と教育現場の連携が必要な局面もある。
前出の男児を支援学校へ通わせている東京都の母親は、以前男児がいた支援学級の担任の先生から、子どもが落ち着くようにと、ADHD治療薬を飲むよう勧められた。頻繁に言ってくるため、医師に処方してもらうと、男児は食欲が落ちて給食も食べられなくなり、夜も眠れなくなった。母親は言う。
「薬の弊害もありうると知らない先生が医療のことに口を出してくることに、正直驚きました」
王子クリニック(東京都北区)院長の石崎朝世さんは指摘する。
「効果と副作用との加減があり、ADHDの治療薬は、使うとしても最小限の用量にとどめています。薬で落ち着いたように見えても、ひらめきや豊かな感性まで抑えられ、その子らしさが失われることもあります」
その子の優れたところ、置かれた環境、薬を使って良かったことと残念だったことなどを把握し、その子をまるごと理解する。そのため、医師は、学校の先生とは親を介して手紙でやりとりし、時には学校に出向くこともあるという。
周りに合わせ、一見クラスに溶け込んだように見える子でも、ちょっとしたトラブルが絶えず、いじめの対象になることもある。失敗を重ね、高学年になって自分のできなさを理解するようになった子どもが抑うつ状態に陥ることは少なくない。長くひきこもり、不登校になる事例もある。
保護者含めて会議
こうした「2次障害」を防ぐために、辻井正次・中京大学現代社会学部教授は指摘する。
「低学年のうちから、子どもができる経験を一つずつ積み上げられる環境づくりが欠かせない」