脅かされる日銀の独立性 「安倍総理」で大丈夫か? 無制限の金融緩和を提唱

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一方、挑戦状を突き付けられた格好の白川方明日銀総裁は、11月20日の定例記者会見において、「一般論として」と前置きし、やんわりとではあるが、安倍氏の提言にことごとく反論した。白川総裁だけではない。専門家の間でも、提言内容の実現性をいぶかる向きは少なくなかった。

ところが、11月21日に開かれた自民党総裁会見で、安倍氏の激しいトーンが微妙に変わる。「日銀による建設国債買い取り」案について、「私が言っているのは直接国債を買うのではなく、買いオペ」と否定したのである。

国債の買いオペであれば、すでに日銀が実行している手法だ。あえて「建設国債の買い取り」と強調していたとすれば、少なくともマーケットは「日銀引き受け」と受け止め、財政規律を緩めかねないものとして、長期金利の上昇リスクが高まっておかしくなかった。その場合、インフレターゲットの目標水準次第では、かなりの金利上昇が促されて、今の日本経済に致命的な痛手を与えかねなかった。

ハンガリーの例もある。同国では昨年末から今年の初めにかけて、政府と議会が中央銀行の金融政策への介入に激しく動いたことを契機に、長期金利が暴騰してしまったのだ。結局、EUが「条約違反」と圧力をかけたことで、ハンガリー政府と議会は介入政策を撤回し、事態は収束に向かった。

処方箋は金融政策だけか

「準備預金の超過準備の付利をゼロもしくはマイナスに」という政策にも疑問符がつく。これを実施すれば、銀行は日銀の準備預金に資金を積み上げるのをやめ、企業向け融資に回すだろうという安倍氏の意図が透けて見える。が、これは「あまりにも素人の発想だ」(メガバンク資金担当者)。

準備預金に資金を積むかどうかの判断は、融資する金利との見合いではなく、3カ月物の短期国債の金利との相対比較で行われているからだ。超過準備の付利水準がゼロまたはマイナスとなれば、銀行は短期国債買いに資金を回し、短期国債金利がゼロまたはマイナス水準へと下がる。そうなると銀行は長期国債を購入し、今度は長期国債金利がしだいに下がっていく。

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