羽田空港アクセス、先行する新鉄道路線は? 3路線に絞り込まれた候補、利害関係が錯綜

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一方、都心直結線に関しては、答申も「事業性の見極めが行われることを期待」との表現で、ほかの2路線と比べるとトーンダウンしている。

同線は、押上から東京駅付近の「新東京」駅を経て、泉岳寺までを結ぶ大深度地下の新線を建設。京成線と京急線をショートカットすることで、都心から羽田・成田空港へのアクセスを向上させよう、という計画である。

問題は、事業費と、並行する都営地下鉄浅草線へのダメージ。都は2015年7月に発表した検討結果には、同線を含んでおらず、慎重に構えている。担当者は「国としては羽田と成田の両方へのアクセスをどうするかを考えたのだろうが、浅草線に与える影響が非常に大きいので、そこが明確になっていない以上は何ともいえない」と明かす。

推進する国交省もまだ調査段階

同線を推進しているのは国交省だ。安倍晋三政権が掲げた「日本再興戦略(2013年)」にも、「首都圏空港の機能強化と都心アクセスの改善」として盛り込まれた。

もっとも現時点では、まだ調査段階。当の国交省も、「大深度地下ということもあり、工事にどの程度費用がかかるか、路線に事業性が見込めるかの調査を行ったうえで、関係各所との検討を行うことになる」(鉄道局都市鉄道政策課)、とのスタンスだ。

空港アクセスの利便性向上は、「国際競争力の強化に向けて取り組むべき“一丁目一番地"」(小委員会の家田仁委員長)。利害関係者が複雑に絡み合う中で、現段階では羽田空港アクセス線が一歩リードといえる。

「週刊東洋経済」5月21日号<16日発売>「ニュース最前線04」を転載)

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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