電子部品を襲う「円高」「スマホ減速」の二重苦

泣きっ面に蜂、どう戦略転換するのか

iPhoneの10~12月期の販売台数を見ると、大幅増となった2014年の7446万台に対し、2015年は7477万台と横ばい。1~3月期は2015年の6117万台から2016年は5119万台へと大きく落ち込んだ。3月にやや小型の「iPhone SE」が投入されたが、台数の伸びを牽引するかどうかは不透明、という声が多く、期待する向きは少ない。

円高に加えて、近年依存度を高めてきたスマホ市場の鈍化が明確になった。業界は”ダブルパンチ”に見舞われているのだ。

不振から逃れるべく、各社とも対策を進めている。村田製作所はスマホ市場の中の成長分野に重点を置く。台数が鈍化しても、機能の進化によって搭載される部品や、一点あたりの単価上昇が見込めるものはある。

たとえば、高速通信のLTE対応スマホは、2016年度で前年比20%以上、台数が増加すると見込まれている。通信規格の高度化によって、1台あたりに搭載されるコンデンサや高周波部品も増加している。同社はこうした製品で世界シェア首位を誇る。部品需要の増加で台数減をカバーする構えだ。

スマホ一本足打法は、もはや通用しない

スマホ以外の分野を成長軸に置いたのが日本電産。順調に拡大している車載用モーターの売上高は、前期の2713億円から2020年度には5000億円以上に拡大させる。同社は円高の影響があっても、今期の業績計画を増収増益とするなど、とにかく強気だ。

好調な事業に見切りをつけたTDKの上釜社長(撮影:今井康一)

大胆な“脱スマホ”を推し進める企業もある。TDKは今年1月、ここ数年の収益を牽引したスマホ向け高周波部品事業を切り出し、半導体最大手のクアルコムと合弁会社を設立すると発表した。保有するオプションを行使すれば、実質的に同事業を売却することになる。

その一方で、昨年末にスイスの車載センサー会社を買収、5年後には車載用磁気センサーで売上高2000億円を目指す。TDKの上釜健宏社長はこう語る。「台数の伸びが鈍化し、コモディティ化が進むスマホに投資が集中するのは避けなければならない」。

スマホ市場の拡大によって、一様に成長を遂げた電子部品業界。スマホが鈍化する中、求められるのは戦略転換だ。円高による過酷な外部環境が待ち受ける2016年は、その真価が厳しく問われる年になりそうだ。

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