バトルロワイヤル化するTwitter なぜ”マス”メディアに変貌したのか

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公式RTは、情報を正確に伝える手段としては優れていたが、交流や意見交換には向いていない。非公式RTの場合、RTした人が元ツイートに意見や感想を付け加えることが多く、議論や交流につながりやすかったが、公式RTはただ黙ってボタンを押すだけなので、発言主はRTした人の意見や意図を知りようがなく、ただ自分の言葉が拡散されていくのを見るだけになる。公式RTの普及でTwitterは、人をハブにした拡声器のような、小さなマスメディアのようなものに近づいていったと思う。

失われた「Twitterの文脈」

“Twitterの文脈”も通じなくなっている。09年ごろまでは、発したつぶやきの影響範囲はTwitterユーザーでほぼ完結していたので、たとえ発言が炎上状態になっても、話題はTwitterの中で閉じるか、せいぜい、2ちゃんねるに飛び火するぐらいまでで収まった。Twitterは一過性のつぶやきという認識は何となく共有されていたので、1つの発言が長くくすぶり続けることもあまりなかった。

だが「Togetter」「NAVERまとめ」といった、Twitterの発言を第三者がまとめられるツールが普及。その場限りでつぶやいたつもりだった発言が第三者にピックアップされてまとめられ、Twitterに参加していない人にも発言を参照されるルートが増えた。炎上したツイートを、ネットメディアがニュース記事化するケースも激増。結果、Twitterの場の雰囲気と切り離された外部サイトやニュース記事で発言が切り取られて一人歩きし、Twitterを使っていない人からも袋だたきに遭うようになってしまった。

筆者も2010年、ツイートが炎上した経験があるが、本格的に燃え上がったのはTwitterの外だった。Twitterで問題の発言をした直後、「ちょっと言い過ぎたかな」と思って反応を注視していたが、ネガティブな反応はなく安堵していた。だがその発言を基に2ちゃんねるにスレッドが立って炎上。発言の翌日以降に、筆者のアカウントに罵詈雑言が殺到し、元発言の公式RTが激増した。その炎上の様子は、エロチックな文体で電子書籍『AiRtwo』に寄稿しています(※ステマ)。

マスになると同時に、プライベートになっていた

Twitterでの有名人や情報の受け取られ方がマスメディアに近づく反面、一般の人はTwitterをよりプライベートなSNSとして利用し始めた。iPhoneの普及に連動し、「スマホで使いやすいSNS」としてTwitterを利用する若者が増加。mixiのアカウントを交換する代わりにTwitterでフォローし合い、個人的な連絡にも活用し始めた。

その結果として相次いだのが、若者の発言の炎上だ。店の店員の若者が、来店した芸能人を名指しで中傷したり、“犯罪自慢”をしたり――。知り合いだけに見せるつもりで、プライベートな感覚で書いた中傷や反社会的な内容は、本人の想定を超えた広い世界に公開されており、大炎上につながった。

利用者の低年齢化も進んでおり、有名人に心ない言葉を投げつけるアカウントを見に行くと、高校生や中学生のアカウントにぶち当たることが増えてきた。ネットで見知らぬ人と対するときの礼儀や態度を身に付けていない一部の若年層が、誰とでも交流できるツールを十分な準備なく手に入れ、不適切な使い方をしてしまっている面もあるのだろう。

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