大阪は長年の「地盤沈下」から抜け出せるのか どないやねん?ポスト橋下の大阪・関西

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本来、都市が発展する上での、好い循環を図式化すると、右上図のように描ける。「①人口や企業が増加(安定的に存在し活動を継続)」することで、「②経済が活性化し、経済成長が持続」する。その結果、収入や税収が増え、「③社会や住民生活が安定・発展」し、「④社会インフラの整備や充実」が進む。④社会インフラの充実は③社会や住民生活の安定・発展にもつながり、③社会や住民生活の安定・発展は、②経済の活性化にもつながる。最終的には、ここで言うような「③経済の発展」「④社会や住民生活の安定・発展」がもたらされていること、それが、何よりも本当の成果である。

しかしながら、実際には、むしろ、右下図のような状況になっていると考えて、差し支えないだろう。問題は、この状況を変えるのに、どこから手を入れていくかということだ。ここまで紹介した大阪維新の取り組みは、「④社会インフラ整備の遅れ・制度的不備」「③社会問題の拡大」などへの対応が多い。行政改革や民営化により、必要な原資を捻出し、社会問題を少しでも解決し、経済を停滞から、成長へつなげていく。もちろん地方政府の役割としては、そこが主題になるのは当然である。

副首都構想は大阪・関西経済を救うのか

しかし、より重要なのは、「②経済の停滞⇒発展」をいかにして実現するか、ということだ。どんな領域で、どんな風に発展するのか。その結果、日本経済・社会全体の双発エンジンと認識されるような成果をいかにして実現するのか、である。その意味では、筆者は都構想や副首都論がどのように展開するかは二次的な問題であると考えている。前述のとおり、ある程度問題が解消されてきているということもあるし、そもそも「副首都になりさえすれば、関西経済が必ず発展する」というものではない。重要なのは、「(副首都であるかどうかにかかわらず)関西・大阪として、日本経済発展のために何を実現するか」ということである。むしろ、そのために、副首都や都構想という制度論が本当に必須かどうかを考えたほうがよいのではないか。

前述の大阪府の報告書の中では、明確な成果とまでは言えないまでも、『この6年の改革努力を経て、若干の変化の兆し』が見られるとの指摘がある。大阪維新≒大阪府市としても、関西経済界としても、成長戦略を検討し、さまざまな手を打ってきており、その幾つかが成果につながってきている。その代表例が、インバウンド領域や再生医療を中心としたライフサイエンス分野だ。次回以降、これらの領域の動向などにも触れていくこととしよう。

稲垣 公雄 三菱総合研究所関西センター長

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いながき きみお / Kimio Inagaki

三菱総合研究所主席研究員。滋賀県出身、京都大学経済学部卒。三菱総合研究所入社後、民間企業向けコンサルティングに従事。2013年より現職。

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