スズキの「軽離れ」が避けられなくなった理由 もはやグローバル戦略を優先せざるを得ない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
画像を拡大
欧州でのテストの様子

対するバレーノは、インドでも欧州でもスイフトより上に位置付けられる。ただし全長は、4m以下なら物品税が半額になるインドの税制に配慮し、欧州におけるBセグメントの売れ筋も考え、4m弱に設定した。

1970年代の名車フロンテクーペなどのモチーフを起用し、シャープに仕上げたイグニスとは対照的に、流れるような曲線を多用したバレーノのデザインは、欧州市場でのトレンドに沿ったものだという。インドでも欧州デザインへの憧れがあるので、このテイストにしたそうだ。

乗ってみた印象

2台に乗った印象をひとことで言えば、スイフトに近い。インド製のバレーノも走行実験は欧州で行っているという説明に納得した。全長やホイールベースの違いもあって、スイフトを基準とするとイグニスはキビキビ感が目立ち、逆にバレーノは穏やかな身のこなしとなる。

バレーノはインド製ということで、作りの悪さを懸念する人がいるかもしれないが、ハンガリー製のエスクード同様、気になる部分はなかった。2輪車の世界ではインド製車両が何台か輸入されており、筆者も体験して安心して走れることを確認しているので、この点は予想どおりだった。

国産車では初めてアップルのカープレイに対応した

イグニスでは国産車では初めてアップルのカープレイに対応し、バレーノではスズキの小型車で初のダウンサイジングターボを国内に初投入するなど、先進技術も積極的に採用している。価格や燃費だけで競う消耗戦を避け、マツダのデミオとは微妙に違う立ち位置で個性をアピールしようとしている。

意外に思うかもしれないが、軽自動車もまたグローバル商品である。インドではアルトやワゴンRが根強い人気を得ている。デザインや排気量など、日本のそれとは異なる点もあるが、基本設計は踏襲している。また前述のセレリオなど、軽自動車作りを生かした海外向け車種も存在する。

しかし新興国では経済成長に伴い、上級車種に目を向けるユーザーが増えている。マルチ・スズキの4月の販売実績によると、アルトやワゴンRが属するセグメントは前年同月比で減少しているのに対して、それ以上のクラスは順当に伸び、スイフトやバレーノが属するセグメントがもっとも多く売れている。

この傾向が進めば、日本以外でも軽自動車ベースの車種の需要が下がっていくことが予想できる。グローバルという目線で考えれば、スズキが小型車に力を入れるのは当然だと考えている。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事