「男子会」で男たちは何を楽しんでいるのか 下心から派生する駆け引きなど気にしない

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下心から派生する駆け引きなど気にせず、同性同士で心地よいことだけに没頭している、そんな風に私の目には映った。

勝手知ったる友達と

店の奥には小さな個室がある。そこから出てきたのは、こざっぱりとした様子の男性3人組。口々に料理や食材について感想を言いあいながら、帰っていった。接待という雰囲気でもない。どうやら2軒目は、キャバクラやガールズバーではなく、モルトウィスキーを揃えたバーに行くらしい。ついつい他の客の会話が耳に入ってしまう夜だった。

ヴァレンタインの日、いったい彼らはどんな風に過ごしたのだろうかと興味がわいた。靴磨きと積ん読本の整理に明け暮れていた私に想像されたくないでしょうけれどね……。

この夜に限らず、こういう感触の光景を最近よく見かける気がする。記憶があいまいなのは、彼らが実にうまく世の中にとけ込んでいるからだ。

「男子会」を楽しむ男性は、上から目線で文句ばかりのくせに財布に手をかけようともしない女や、「カワイー」しか語彙がなくせっかくのご馳走の価値もわからない女にほとほと疲れてしまったのかもしれない。いやいや、そんな極端な相手でなくても、さぐりあって気を使いあっての食事より、勝手知ったる友達と一緒のほうが刺身も肉もお酒も純粋に堪能できるはず。自分がそうだから、よ〜くわかる。一番行きたいレストランに行くのは、気軽な女同士のことが多い。

なんだけれど、私は「女子会」という言葉が苦手。この言葉が発する、キラキラと輝く物事すべてがまぶし過ぎて、どうにもこうにも気恥ずかしい。自分が女子なんていう年齢ではないことは百も承知、友達同士の食事をしゃあしゃあと「女子会」と呼んだりはしない。ある友達は「婦人会」といい、私は「レディースの集会」と称している。婦人会も集会も、女子会がゆがんで進化したものと思っていただきたい。

「女子」も「男子」も大人ではない。だから、女子会や男子会を好む人は、いつまでたっても大人になれないのではないだろうか。大人というのは、実際の年齢のことではなく精神の成熟のことだ。仕事で疲れていたとしても、プライベートだって居心地の悪さや気まずさを乗り越えていかなくてはね。自戒をこめて。

甘糟りり子/ 作家。アパレルメーカーを経て文筆業に。バブル時代の空気を切り取るリアルなタッチは自他ともに認めるところで、ファッションや食、クルマ、スポーツには一家言ある。近著に『逢えない夜を、数えてみても』(河出書房新社)

 

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