「男子会」で男たちは何を楽しんでいるのか 下心から派生する駆け引きなど気にしない
草食系男子、サードウェーブ系男子……。最近の男たちは、いろいろな呼ばれ方でくくられるが、甘糟りり子が偶然出会った、男子会をする男たちは現代の男たちを象徴するのか?
女同士のおしゃべりと男同士のそれ
この間、奇妙な光景を見た。あれはヴァレンタインを翌日に控えた土曜の夜。飯倉片町交差点近くの和食屋にいた。
看板のないその店は、「知らなければたどり着けない」系。というより、知っていても久しぶりだととまどってしまうぐらい、わかりにくい。そこで楽しめるのは、新鮮な刺身や焼き魚、牛肉の炭火焼き、そしてすりたての鰹節付きの卵掛けご飯など。素材にこだわっていて、そこそこな値段の店である。もちろん、どれも美味。
私は年下の友人と2人でカウンターの一角を陣取っていた。久しぶりに会ったので、お互い話すことがいっぱいあった。乾杯もそこそこに、女同士のおしゃべりに熱中した。そんな私たちと前後して、何組かの客が訪れ、あっという間に店は満席になった。グラスやぐい呑みに酒が注がれる音、食欲を刺激する香ばしい匂い、客たちのくつろいだ会話……、どれも私がよく知っているもののはずなのに、何かが違う。なんとなく「ヘンな感じ」がする。
刺身の皿が終わり、ノドグロの焼き魚に箸を伸ばそうとして、気がついた。私たち以外の客が全員、男性の2人組である。皆、ビジネスマン風のかちっとしたスーツを着て行儀よく座り、美味に舌鼓を打ち、ゆったりと話し込んでいる。決めつけてはいけないけれど彼らはいかにもゲイという様子ではないし、上司と部下でもなさそう。気の置けない友人同士、美味と酒と会話を楽しんでいるみたいだった。私たちと同じように。
彼らは「男子会」をしているのだ。きっと。