マイクロソフト「サーフェス」の衝撃 日の丸パソコン崩壊?
マイクロソフトが周到な準備の末に発売した“純正”ハードウエアの「サーフェス」。薄くて軽いこのタブレット端末は、ハードウエアとソフトウエアを別のメーカーが担当する“水平分業”で成り立ってきたパソコン業界を大きく変貌させるインパクトを持っている。
サーフェスは最新OSである「ウィンドウズ8」の発売日と同じ10月26日に八つの国と地域(米国、カナダ、オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、香港、英国)で発売された。日本は当初の発売地域から除外されているが、すでに販売されている地域では好調なペースで売れており、マイクロソフトは月100万台ペースでの販売を見込んでいる。特に米国市場での事前予約台数が想定以上だったようで、当初段階では欧州へ回す台数が不足するなどのトラブルも発生した。
月100万台ペースというのは、年間3億5000万台の世界パソコン市場と比べると、ごくわずかにすぎない。サーフェス構想を明らかにした6月以降、マイクロソフトは事あるごとに「パートナービジネス(水平分業)の重要性はまったく変わらない」(スティーブ・バルマーCEO)と強調してきた。
が、それはハードウエアを担当してきたパートナーの動揺を抑えるための建前だ。そもそも、マイクロソフトが自らハードウエアに乗り出した理由は、強大な勢力になったアップルに対抗するため。バルマーCEOは「アイパッドなど他社のタブレットは仕事と遊びを両立させることができていない。この二つを両立させ、適切な価格で製品を提供できるのは、アップルでもアマゾンでもグーグルでもない。マイクロソフトだけだ」と強調。マイクロソフトの金城湯池であるパソコン市場を侵食し年間1億台へと市場規模を拡大してきたタブレット端末における地歩を築こうと懸命だ。
これまでのアップル対抗策は及び腰だった。2006年にはアップルの「アイポッド」に対抗するために音楽再生ハードウエア「ズーン(Zune)」を発売。東芝やサムスン電子へ委託生産してきたが、鳴かず飛ばず。11年に撤退した。
結局、アップルの独走を許し、アイパッドに金城湯池を脅かされるようになってしまった。もはやパートナービジネスにヒビが入ることは覚悟のうえで、アップルに正面から対抗する決断をしたわけだ。
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