なぜ人間は純粋無垢な心で生きられないのか 枡野俊明住職に聞く「禅を学ぶ」ことの意義

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「くまのプーさんは、意図せずに禅を理解している」と、最新刊『くまのプーさん 心がスッキリする幸せのヒント』の中で枡野氏は解説している。自然体で自由に毎日の生活を楽しんでいるプーは人を陥れようとする邪悪な気持ちとは無縁で、いとも簡単に、無心に行動することができるのだそうだ。

動物は図らずも禅の世界を生きている

枡野俊明(ますの しゅんみょう)/1953年生まれ。多摩美術大学環境デザイン科教授。庭園デザイナーとして祇園時紫雲台庭園『龍門庭』など多数の作品を手掛け、著書の累計部数は200万を突破している

「禅語は、禅僧たちが厳しい修行の末に行き着いた言葉であり、物事の真実です。プーの暮らす幸せなコミュニティーの世界観は、禅の世界とも通じるところがあります。この本は、プーとその仲間たちの生き方を禅語になぞらえて解説したものですが、どの言葉を拾っても、人間社会に通じるものばかり。

動物は寝たいと思ったら寝る、嬉しいと思ったら嬉しい、悲しいと思ったら悲しい、それが当たり前。自分の心をそのまま映す“鏡の心”を持っています。人間も本来はそれを持っているのですが、自分が得をするとか損をするとか執着があるために、正しい選択ができなくなってきています。本当はいいと思っているのに、これをしたら周りによく思われないかも、など行動よりも考えることを先にしてしまうので、そこに計らいことが出てきてしまう。動物は純粋無垢です。それを見て、人間は癒されたり心地よかったりしますよね。彼らもまた、図らずも禅の世界を生きています。

では、人間はどうしたらよいか。禅とうまく付き合う方法は、日々の生活習慣を意識してみることです。私は毎日4時半に起き、お寺の門を開けて仏様、お墓をお参りして回ります。そしてお湯を沸かして仏様にお茶をお供えして回り、坐禅、朝のお勤め、朝食を終えて7時半から仕事を始めます。

皆さんは禅僧ではありませんので、私と同じである必要はありませんが、たとえば毎日、デスクをきれいに片付けるとか、料理を丁寧に作ってみるとか、物事に集中して向き合うことで、禅の心を理解できるようになるでしょう。何かしなければならないときに、頭で考えずに先に行動することです。面倒くさいな、明日にしようかな、これをすることに意味があるか? と考えるのは、損得勘定。考える前に一歩踏み出せるようになると、禅の世界を生きられるようになります」

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