鉄鋼市況、改善トレンドに水差す中国の濫造 新日鉄住金、大幅減益からの復活は不透明
原料価格も反騰しているが、鋼材市況ほどではないため、メタルスプレッド(マージン)は拡大傾向にある。中国鉄鋼メーカーの赤字拡大で安値輸出が限界に達したことに加え、中国政府が2016年1月に鉄鋼の生産能力を20年までに1億~1.5億トン削減する方針を打ち出したことが市況反転の契機となった。
ところが、同年3月の中国の粗鋼生産は7065万トンと、前年同月比で15カ月ぶりの増加となり、月間で過去2番目の高水準まで急増。同月の中国の鋼材輸出も998万トンと前年同月比で30%も増えた。市況好転を受けて、休止していた設備が再稼働しているのではないかと観測されている。新日鉄住金の栄副社長は、「マーケットが大底を脱して改善するのではとの期待感は持っているが、このまま市況が上がるとは思えない。上がったり下がったりではないか」と、持続的な市況改善に疑心暗鬼だ。
今年3月末の市況を業績予想の前提としたJFEの岡田伸一副社長も、「中国の3月の粗鋼生産を見てビックリした。どの目線で計画を作ったらいいか悩ましい」と言う。4月に入って市況は一段と高騰したものの、「基本的に中国の大きな需給ギャップが一気に解消することはなく、今(4月以降)の市況上昇をベースに計画を立てられない」と話す。
顧客の自動車産業などへの打撃も懸念
昨今の円高急進も不安材料だ。2015年度は通期で1ドル=121円平均だったが、直近では110円を大きく割り込んでいる。新日鉄住金の栄副社長は、「当社の場合、フロー(販売・調達)では輸出入のバランスがほぼとれているので為替の影響は大きくないが、ストック(資産)ベースでは10円の円高が1年間続けば数百億円規模の減益要因となる」と説明する。そうした直接的要因に加え、自動車や電機産業など主要な顧客が円高の打撃を受けて、鋼材需要が落ち込むという間接的要因も危惧されるところだ。
こうしたことを考え合わせると、確かに業績を予想するのは非常に難しい。新日鉄住金の場合、在庫評価損や為替差損などの一過性要因を除いた前下期の経常益は1260億円程度(一過性要因を含めると710億円)で、これが実力ベースの利益水準といえる。年間では約2500億円だ。
今期はプラス要因として、国内での下期の需要増、海外でのマージン改善が期待される。反面、円高がマイナス要因となる可能性が大きい。そのため、今のところ今期の経常益は実力ベース(2500億円)の水準をめぐっての綱引きと見ることができよう。
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