英原発大手買収で日立が得る海外への活路
日立製作所は30日、英国の原子力発電事業開発会社ホライズン・ニュークリア・パワー社を買収すると発表した。買収額は6億7000万ポンド(約850億円)で、11月中の買収完了を目指して手続きを進める。
英国では現在16基の原発が稼働し、全発電電力量の約2割をまかなっている。が、設備の老朽化が進んだことで、新規建設に向けた動きが高まっていた。このため2020年代前半の運転開始を目指し、英国2カ所で1300メガワット級の原発設備を4~6基建設する予定が進んでいる。
計画に異変が生じたのは今年3月末。ホライズン社の大株主だったドイツ企業が、ドイツの脱原発方針を受けて株売却の方針を表明した。複数社がプロジェクト引き継ぎに名乗りを上げる中、最後まで残ったのが日立と東芝の日本企業2社だった。条件交渉の結果、日立がホライズン社を射止めることとなった。株売却表明からわずか7カ月という短期間での交渉だったため、パートナー企業を募ることもできず日立単独での入札になったという。
業績への影響は、当面先となりそうだ。英国での建設が始まる前に許認可を取る必要がある。その間にホライズン社を通してパートナー企業を募ることで、出資比率は5割未満まで引き下げる方針。「日立が原子力発電事業をやるわけではない。プラントメーカーとして、発電所を作る場が欲しいだけ」(羽生正治執行役常務=写真=)。脱原発へ向かう日本に依存せず、海外展開に活路を見出そうとしている。
日立はリトアニアでも原発建設計画を掲げているが、10月末の国民投票で原発反対派が6割を超えるなど黄色信号が灯っている。国内で建設中の原発も停止中で、工事再開のメドはまったくたっていない。だからこそ今回のホライゾン社買収で、英国の原発建設を手にした意味合いは大きい。
(前田 佳子 =東洋経済オンライン)
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