川内・伊方原発での避難は、福島よりも過酷だ 「原発避難計画の検証」の上岡直見氏が警告

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――四国電力・伊方原子力発電所(愛媛県伊方町)の場合はどうでしょうか。

伊方原発の事故の際の避難はさらに困難をきわめるだろう。佐多岬半島の幅は極端に狭く、土砂災害危険箇所が主たる避難経路である国道197号線に全面的にかかっている。半島の付け根に所在する原発よりも西側のエリアで暮らす住民はどこにも逃げ場がない。半島の西側部分は「予防避難エリア」として船で大分県に逃げる方法も検討されているが、船は津波警報が出れば出航できない。気象状況によっても運行できない。つまり、原発事故を伴う複合災害では、避難計画は機能しない。

鉄道、道路とも不通で福島上回る惨状に

九州電力・川内原子力発電所(撮影:尾形文繁)

――川内原発や伊方原発の事故時の避難計画では、PAZ(予防的防護措置を準備する区域、おおむね5キロ圏内)に何人が暮らしていて、そのうち高齢者や障害者、子どもなど避難の際に支援を必要とする者が何人いるか、そして各集落から区域外のどの避難所に避難させるかなどが細かく記載されています。また、要支援者の避難のために何台のバスや福祉車両が必要であり、あらかじめ何台が確保されているかも記載されています。以前と比べるとかなり具体的になった印象もあります。

それでも実効性があるとは思えない。強い地震が起き、道路が一部でも寸断された時に、バスなどを呼び寄せることができるのか。また、放射線量が上昇しているさなかに、被ばく覚悟で迎えに来てくれる保証もない。大地震では受け入れ先の自治体も被災している可能性が高く、30キロ圏外に逃れたとしても、想定していた避難施設で受け入れてもらえるかは、保証の限りではない。単に移動するだけでなく、人工呼吸器使用者など設備のマッチングもしなければ動けない。

――薩摩川内市は2014年度に鹿児島県に対して、避難に際して新幹線や在来線の活用ができるように要望しています。

今回、新幹線は脱線したし、在来線も不通になった。強い地震の際に鉄道が正常に運行されているとは思われない。おのずから避難は自家用車中心になるが、電柱一本倒れただけでも動けなくなる。福島事故の際にも幹線道路で自動車が数珠つなぎになったが、それでも道路が健在で通行ができただけよかった。その点でも、福島での避難を上回る惨状が起きる可能性が高い。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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