世論調査でも自民党支持率がはね上がり、滑り出しは上々だ。今夕(19日)の野田首相との党首会談が事実上の初仕事だが、お手並み拝見である。
57年の自民党の歴史で初の元総裁の再登板だが、「負けたら政治生命消失」という森元首相らの制止を振り切って総裁選に出たのは、逆に「不出馬では政治生命消失。今度は独り立ちして裸で一から出直し」という覚悟と決意だったに違いない。
だが、5年前の衝撃的な首相退陣劇、首相在任中の未熟な政権運営などを思い出して、再登板を懸念する声も強い。健康状態は、次の出処進退では、衆参の選挙は、再び首相となったときの政権運営は、といった疑問点が消えていないからだ。
そこは今後の「安倍政治」を見るしかないが、何よりも知りたいのはこの時期になぜ再登板を決意したかである。
総裁就任の記者会見で、次期総選挙の争点について、外交、安全保障、経済成長、教育と並べて「憲法改正に取り組む」と持論を述べたが、再登板後の達成目標は、ずばり憲法改正の実現だろう。
首相在任中の07年、国民投票法を成立させた。3年の実施期間が設けられたので、09年に総裁再選を果たして10年以降に実際に改憲に挑戦する計画と見られたが、その前に退陣となって挫折した。だが、いまならいつでも改憲に着手できる。
その間、衆参ねじれが続き、統治システムの見直し論も高まって、改憲容認の空気も広がり始めた。改憲を唱える橋下大阪市長のブームも起こり、好機到来と思ったのではないか。
仮に総選挙後に安倍政権が誕生した場合、ねじれ克服には民主党との提携が必要になるのに、それに否定的なのは、「改憲勢力結集による政界再編」というシナリオを想定しているのかもしれない。だが、統治システムの見直しよりも、まず第9条の改正、と考える安倍総裁の改憲姿勢が国民の幅広い支持を得るかどうか。国民の要望は改憲よりも経済好転、雇用、少子・高齢化対策などだ。
その前に一つ。アッキー夫人の居酒屋開店が週刊誌で記事になっているが、カイケン問題よりも足下のカイテン問題への取り組みについてお手並み拝見。
(写真:尾形文繁)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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