ガストが焼肉、しゃぶしゃぶ店に変わる理由 すかいらーく谷社長に戦略を聞いた

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――逆に、実験でうまくいけば全店展開してもうまくいくのか。他社を見ると、必ずしもそうなってないように感じる

それは実験の仕方が悪いのではないか。たとえば、当社では広島産カキのテレビCMを広島地区では放送していない。CMを流した地区と流していない地区の効果がはっきり出る。結果、売り上げに4.6%くらい差が出ることがわかった。こういうものをすべからく、データを取ってやっている。

たに・まこと●1951年富山県生まれ。1977年関東学院大学経済学部卒業、すかいらーく入社、2008年から現職

また、宅配の売り上げを上げるために、ガストのアプリを使って雨模様のときに「ガストで宅配を頼みませんか」という案内を150万人に出したことがある。宅配ビジネスは雨や風の日に売り上げが上がるものだが、利用はたった7件だった。

なぜ注文がなかったかをデータ解析すると、サイトの登録や注文の手続きが面倒で、途中で挫折していることがわかった。これでは仮にマーケットがあっても注文を受けられない。そういう失敗、分析もしている。

――実験店はどのように抽出しているのか。

実験では必ず、対象となる店舗と似た店舗を商圏データから抽出して比較する。たとえば、子どものメニューを実験するときは、8歳以下の人口が12%以上の店舗だけを全国の店舗から抽出して、その店舗だけで実施し、やらない店と比較する。お年寄りだけがいるところで、子どものメニューをやっても効果はよくわからない。

こうした分析は前からやってはいたが、ベインが来てから専門の分析部隊を作った。というより、彼らが色々なデータを欲しがるので、自然発生的にできたといったほうが正しい。

駅前の専門業態に商機あり

――今後の成長戦略は?

ジャンルが明確な店のシェアが拡大している。当社の3000店の中でも、主力業態のガストからしゃぶしゃぶや焼き肉といった専門業態への転換を進めている。既存店に投資の大半を投じ、激変するマーケットに対して素早く対応すること。これが最も成長の近道だと考えている。この手法で国内でもまだ成長していける。

ゆめあん食堂はとんかつからうどん、そば、定食など、和食が中心の業態だ

――将来的にガストと専門業態の比率はどれくらいになるのか?

2020年ごろには専門業態とガストの比率が2対1ぐらいになるだろう。個人商店が減っている駅前には「ゆめあん食堂」という、うどんと和食を中心としたファストカジュアル業態を出している。たとえるなら、ラーメン店「日高屋」の和食版、もしくはプレナスの定食チェーン「やよい軒」みたいなものだ。家族連れが食事をするわけではないが、食材がはっきりしている。

たとえば、女性が働きに出れば出るほど、簡易に食事をしたいというニーズが増える。ライフスタイルの変化によって広がるマーケットに対して、しっかり店数を投入していく戦術だ。

――専門業態における競争は激しくなる。

駅前のうどん、そば、ラーメン、すしや、中華食堂は、世代交代が進まずに減ってきている。そのなかで日高屋、やよい軒、天丼のてんやは駅前に出店し業績を伸ばしている。このマーケットは今後も間違いなく膨らみ続ける。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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