パナマ文書は、大英帝国「最後の敗戦」である 「英王室領=タックスヘイブン」の重い意味
――今後の影響は?
まず、認識しておくべきは、すでに今の行き過ぎた、グローバル企業による租税回避、富裕層の相続税回避を是正する動きは始まっている、ということ。2014年12月にOECDはトリクルダウン理論(富める者から貧しい者へと富が滴り落ちていくこと)を否定する報告書を明らかにしており、富裕層優遇の税制の在り方を改める動きが始まっている。グローバル企業に対しても、英国ではスターバックスやグーグルなどの行き過ぎた税金逃れに対しメスを入れる動きが始まっていた。
今回のリークにより、もっとも手厳しい批判を受けたのはキャメロン首相だろう。スタバ問題で多国籍企業を批判し、サミット議長として租税回避の阻止を訴え、同時に国内で付加価値税の増税と福祉の切り捨てを行ったにもかかわらず、その首相自身がタックスヘイブン絡みで利益を受けていたのだから、国民の怒りは収まらない。
こうなると英政府はこれまで以上に大企業、富裕層優遇を改める姿勢を明確にせざるを得ない。5月に行われるサミットでも、中心議題になることは間違いないように思う。パナマ文書を契機に、タックスヘイブンを利用した租税回避を是正する動きが加速することが期待できるだろう。
大英帝国を支えてきた金融業
――英国が動く意味は大きい。
先進国における租税回避の司令塔はロンドンのシティとニューヨークのウォール街にある。製造業が衰退する中で金融業を花形産業に育て上げたのは、両国だ。
中でもカリブ海などの世界の英国領の島嶼国がタックスヘイブンとして機能している。例えば王室属領であるジャージー、ガーンジー、ケイマン、英領バージン、マン島などはもっとも有名なタックスヘイブンだ。大英帝国は第二次大戦後に完全に覇権を失ったわけだが、それらの島嶼国をシティーのオフショア金融と結びつけることで地下経済を拡大させ、英国王室も含めて富裕者の財産の回避地となることで、経済を維持してきたともいえる。
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